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無能王子と愉快な仲間たち
官能リレー小説 - ファンタジー系

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無能王子と愉快な仲間たち 1

メインランド王国はつい最近、建国30周年を迎えたばかりの由緒もへったくれも無いバリバリの新興国である。
元々この地は別な国によって統治されていたのだが、暴虐の限りを尽くしていた暴君を、その臣下であった先代国王が打ち倒して建国した。
そんな新興国も初代が逝去して二代目の治世となり、少しは国家としての貫禄も付いて来たであろうかという現在、この国には人々から無能王子と呼ばれている一人の王子がいた。
この物語は、現国王と正妻との間に生まれた長男であるにも関わらず、後に生まれた愛妾の子である次男に王位継承者の証である王太子の称号を奪われ、しかもそれに対して何の抗議も反論もせずに黙って受け入れた挙げ句、自身はサッサと辺境に与えられた領地に引っ込んで悠々自適の暮らしを送っているヘタレ王子…アーサー・ド・ローライトの物語である。


1.無能王子

「ルシア!ルシア〜!」
「は〜い、アーサー様〜!ただいま参りま〜す!」

ここは王都を数百里、離れて遠きメインランド王国の最北端フリージア州。
その州都オラーフ、ここは堅牢な城壁と深い堀を二重三重に張り巡らした城塞都市である。何故そんなに防備に力を入れるのかというと、この街は北方の国境線である天嶮ノーザン山脈を隔てて向こう側にある巨大軍事国家ドラグニア帝国と対峙する最前線の砦でもあるからだ。
このオラーフ城の城主こそ、この物語の主人公、無能王子アーサーである。

「おぉ!やっと来たか、ルシア」
ここは城の執務室。中央に置かれた机の前に腰掛けていた一人の青年…アーサーが、部屋に入って来たメイドの姿を見てそわそわした様子で立ち上がった。
鮮やかな金髪碧眼に、そこそこ整った顔立ち…なかなかの好青年と言って良い。
「何のご用でしょうか?アーサー様」
「うむ、先月王都の書店に注文した『女騎士物語〜ちょっぴりエッチな女騎士と仲間達の大冒険〜(全20巻セット)』が今日届いているはずなんだが…」
「あら、それでしたら先程お店の方が見えられましたがフレデリック様が追い返してしまいましたよ?」
「な…何だとぉ!!?」
それを聞いたアーサーの顔色は一瞬で真っ青になり、次の瞬間、真っ赤になった。
(面白い人…)
ルシアと呼ばれたメイドはそんな主人の様子を割と冷めた目で観察しながら思った。

「マチルダ!!酷いじゃないか!!なぜ帰した!?」
アーサーが怒鳴り込んだのは城の書記(文官)達の事務室だった。
向かい合わせに並べられた机に座って書類に目を通していた書記達は、突然の城主の訪問に驚き目を丸くして呆然としている。
だが一番奥に一つだけ離れて置かれた大きな机に腰掛けた女書記官は臆する事無くアーサーを睨み付けて言った。
「当然です!何が『女騎士物語〜ちょっぴりエッチな女騎士と仲間達の大冒険〜(全20巻セット)』ですか!?」
「あ!バカ!みんなの前で言うなって…!」
書記の何人かが堪えきれずに「ブフッ」っと吹き出した。
オラーフ城主席書記官マチルダ・フレデリックは銀縁の楕円形の眼鏡を上げながら説教じみた口調でアーサーを諌めた。
「月に一便しか来ない貴重な王都からの定期馬車でそのようなくだらない物を運ぶなど…食料品、医薬品、その他様々な生活必需品…必要な物は他にいくらでもあるのですよ!?」
「くだらないとは何だ!?娯楽だって立派な生活必需品じゃないか!フッ…まったくこれだから文化の“ぶ”の字も解らん堅物は困る…」
「ヤレヤレ…」といった風に肩をすくめて左右に首を振るアーサーにマチルダは言った。
「先月購入した『爆乳エルフ女戦士の冒険〜ポロリもあるよ♪〜(全12巻セット)』は既に読み終えたのですか?」
「わぁー!!わぁー!!やめろぉー!!」
アーサーは耳まで真っ赤にして大声で喚きながらマチルダに駆け寄った。
書記達は笑いを堪えるのに必死で腹と口を押さえてプルプルと小刻みに震えている。
そう、このアーサー王子…好青年的な外見とは裏腹に、かなり“イタイ”青年なのであった。
「殿下!いい加減ご自身のお立場を自覚してください!王太子の座を退いたとはいえ、あなたはこのメインランド王国の王子…そしてこのフリージア州を治める領主なのですよ!?」
「そんな事を言われてもなぁ…だいたい僕が手を出さなくとも領内はそれなりに上手く治まってるじゃないか…」
「それは私たち書記が万事滞りなく諸事を処理しているからです!」
「そ…そうだったの…?」
「うんうん…」と書記達が肯く。
「殿下、あなたの成すべき事はたった二つだけなのです!」
マチルダはアーサーの両肩をガシッと掴んで言った。
「え!?たった二つで良いのか?」
「はい!まず一つは領主としての責務を果たす事。もう一つは…」
「も…もう一つは…?」
「お世継ぎをお作りになる事です!」
「世継ぎ…」
アーサーはポツリとつぶやいた。
「…それ養子とかじゃあ…」
「ダメです。あなた別に種無しじゃないでしょう」
アーサーの提案はマチルダに即否定された。

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