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異色の瞳
官能リレー小説 - ファンタジー系

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異色の瞳 107



「…ロ……ゼロ…」

暗い暗い闇の中。誰かが呼ぶ声がする。

何も見えない暗闇。

自分が何処を向いているのかすら分からない。

「ゼロ……ゼロ……」

優しい女性の声に何度も呼ばれ、ふとその声に懐かしさを感じる。
それと共に、左目が仄かに温かい気がした。

「…だ…れ…?」

掠れた声で、声の主に問い掛ける。

「貴方は、人間が憎い?」

声が急に頭の中で響く。

「別に…。憎んではいない…」

一瞬、男達にレイプをされた事が、脳裏にフラッシュバックする。

「あんな事されたのに?」

それを見透かしているかの様に、頭に響く声。

「あれは…僕が悪い…。相手を見くびり過ぎてたんだ…」


「貴方は優しい子…良い子に育ったわね…」

「???」

まるでゼロの全てを知っているかの様に呟く声。

「ゼロ…貴方になら、この力を委ねても良いかもしれないわね…」

「え?」

何がなんだか、さっぱり分からないでいるゼロ。

「やっと重い腰をあげたか」

いきなり男の声がする。
太く、低い声。

懐かしい気がする声。

左目と共に温かくなる右目。

「あなただってまだ本腰入れてないじゃないの」

クスクスと笑いながら女が男に言う。
まるで仲の良いカップルか夫婦の様…。
「たまに暴れさせて貰ってたがな…」

クックッと笑いながら言い返す男に、ゼロは問いかけた。

「…父…さん…」

「…母…さん…」


懐かしさを感じる声に、瞳だけではなく、心まで温かくなる様な感じ。

ゼロにはそう感じた。
感じたと言うよりも、直感がそう訴えてくる。

「ゼロは仲間を護りたいか?」

男がゼロの質問に答えず、質問で返す。

「…護りたい。僕の大事な友達だもん!」

ゼロは、はっきりとそう答える。

「もし、人間達が居なくなってしまったらどうする?」

女の声が問い掛けてくる。

「人間が居なくなるのは悲しい。人間が居なくなるのは嫌だ」

キッパリとゼロは言い切る。
「ゼロ、その人間の友達がお前の仇をとろうと奮闘しているみたいだ」

「…本当か」

「これからは私達も力になるから、護りたいものをしっかり護ってあげなさいね」

「はい!」

「俺達は何時でもお前の傍で見守っている…」

「ありがとう。父さん、母さん」




目を開けると、そこは見馴れてきた宿屋の天井。

「ゼロ?」

聞き慣れた女の子の声がする。

「フィウ…」

自分の事を心配していたのが良くわかる表情の彼女を抱き寄せる。

「ごめん。心配掛けて…」

「…バカ…」

額に軽くキスをすると、ゼロはフィウを解放し、起き上がる。

「セフィル達が、またアジトに行ってるんだってな」

「え…何で…」

何で知ってるの?と言わんばかりの表情をするフィウ。

「ライムも着いて行ってます」

もう一人の少女の声。


レオナだ。

「ん〜…アイツだけだと足らないかもなぁ〜」

ゼロは着替えながらレオナにそう言う。

「え…」

二人がゼロの言葉に固まる。

「前に来た魔族みたいな感じの奴が何人かいる」

「それじゃ…」

「大丈夫。僕も手伝いに行ってくるから」

着替えが終わり、窓を開けるゼロ。

「だってまだ…」

「大丈夫だから」

フィウは思わず息を飲んだ。
月明かりに照らされた彼の顔。
両目が淡い光に包まれて、綺麗に輝いている。

前にもあったが、それとは違う、強い意志を感じる光。

「行ってくるね」

そう言ってゼロは窓から飛び出した。

「ちょッ!」

驚いたフィウが窓から身を乗り出すが、彼は下には居なかった。

此処は三階。

下は硬い石の道路。

辺りを見回してもゼロが見当たらない。

ふと月明かりに影を感じ、上を向く。

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