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ヲタクエスト
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ヲタクエスト 5

「うむ、許す。あの者をこれへ呼べ。話がしたい…」
「畏れながら殿下、氏素姓も良く知れぬ者をみだりに近付けるのは…」
「良いではないか…それぐらい…。それに、もしあの若者が私の命を狙う刺客であれば、お前達にとっても都合が良いのでは…」
「殿下!!もうお止めください!!」
オフィーリアはもう耐えきれぬというように叫んだ。
「…そうじゃな…お前達を責めても仕方の無い事であった…許すがよい」
「い…いえ、私の方こそ…つい声を荒げてしまい申し訳ございません…」
二人のやりとりを見たブタオは思う。
(な…なんか訳ありみたいだなぁ…)
オフィーリアはブタオを手招きした。
「ブタオ、こちらへ…」
「は…はい!」
ブタオが馬車の前に立つと女騎士の一人がドアの取っ手に手をかけた。それを合図に他の女騎士達も地面に片膝を付く。
「ブタオ!何をボーっと突っ立っている!?君も同じようにせんか!」
「ブフゥ!?す…すんません!」
オフィーリアに促され、ブタオも慌てて同じ姿勢を取った。
(ブヒィ〜!しゃ…しゃがむと腹がキツいぃ…)
ガチャリ…と扉が開けられた。
オフィーリア以下騎士達は頭を下げる。だがブタオは馬車の中から現れた人物に目を奪われていた。
そこにいたのは10歳前後と思しき一人の美少女だった。ほぼ白に近い淡い金色の巻き毛を腰あたりまで伸ばし、ぱっちりとした大きな目は二重まぶたで、見つめていると吸い込まれそうになるライトブルーの瞳、色白できめ細かな肌に、将来美人になるであろう整った目鼻立ち。淡いピンク色のドレスに身を包み、頭には宝石を散りばめたティアラを戴いている。まるで絵本の中から抜け出して来たような“お姫様”がそこにいた。
「ブホオォーッ!!金髪ロリっ子キタアァーーーッ!!お人形さんみたい!!萌えぇーーっ!!写メ写メ…!!」
ブタオは興奮してポケットから携帯を取り出し、現れた金髪幼女を写メろうとした。が…
「コラッ!何をゴチャゴチャ言っとる!?お前も頭を下げんか!」
女騎士の一人がブタオの頭を掴んで思いっきり押し下げた。
「へぶしっ!!?」
ブタオは顔面を地面に叩き付けられた。
「この無礼者!!こちらにおわすお方をどなたと心得る!?恐れ多くも先の国王陛下の王女様にして現国王陛下のお妹様…シャルロッテ・デ・ラ・エルフィーリアス姫様にあらせられるぞ!」
「ははぁーっ!!」
ブタオは地に這いつくばるようにひれ伏した。彼的に最大級の土下座である。別に葵の御紋付きの携帯用薬入れを出された訳ではないが、こう言われて平伏さない日本人はいないだろう。
「面(おもて)を上げよ…」
シャルロッテ姫の言葉にブタオは土まみれの顔を上げ、再び彼女を見上げた。
「ブヒイィ〜…て…天使様ぁ〜…ど…どうかこの醜い豚に…ば…罰をお与えくだしゃいぃ…」
興奮のあまり意味不明な事を口走るブタオ。それに対してシャルロッテは少しも動じず、年齢に見合わぬ落ち着き払った口調で言った。
「そう畏まらずとも良い、エルフィール王国王妹シャルロッテじゃ」
そしてドレスのスカートをつまみ上げて馬車から降り立ち、ブタオの前にしゃがみ込んだ。
「で…殿下!いけません!」
「良い、オフィーリア。構わぬ…」
シャルロッテはオフィーリアの前に右手を差し出し、彼女を制した。
(ブフゥ!?きょ…距離が近い!スーハー…スーハー…甘い匂いがするぅ〜♪)
「此度(こたび)は災難であったな…。お前の仲間の命を奪ったオーク…恐らくはこの私を殺めるためにこの辺りに放たれたものじゃ…。許せ…。恨むならばこの私を恨んでもろうて構わぬ…」
「ブヒィ…?い…いい…一体どど…どういう事ですか…?じ…事情がさっぱり…」
「…私は死を望まれておるのじゃ…」
シャルロッテは悲しげな表情でつぶやくように言った。
「え…そ…それってどういう…?」
「…いや、何でもない。忘れよ」
「殿下、そろそろ…」
そこへオフィーリアが割って入った。
「…うむ、参るとするか」
シャルロッテは立ち上がり、女騎士の差し出す手に掴まって再び馬車に乗り込んだ。
「ブフゥ…(なんか釈然としないなぁ…)」
「ブタオ!行くぞ!」
「あ、はい…ってエェ〜!?」
なんとオフィーリア以下女騎士達は全員近くに停めてあった馬にまたがっている。
「ぼ…僕だけ徒歩ッスか!?」
「何を言う?当たり前だろうが。だいたい君は馬に乗れるのか?」
「うっ…の…乗れませんけどぉ…」
「では行くぞ」
オフィーリアは馬の腹を軽く蹴った。馬はぽっくりぽっくり進み始める。
(おっ…この程度の速さなら楽に付いて行けるかも…)
だが、馬車の御者台に腰掛けた女騎士が馬に鞭を入れると、ガラガラと音を立てて馬車が自転車くらいの速度で走り始めた。当然、周りの騎士達もそれに合わせる。
「ぶへえぇ!?マ…マジッスか!?」
「何をしているブタオ!?走れ!はぐれたらまたモンスターに襲われるぞ!」
「ブヒィーッ!ブヒィーッ!ヤ…ヤバい…もう辛い…死ぬうぅ〜」
ブタオにとって地獄のマラソンが始まった。

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