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異世界物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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異世界物語 2

彼女…マリエルの話によると、ここは俺の住んでいた世界とは異なる世界なのだという。
異次元宇宙なのか、それとも同じ宇宙に存在する別の惑星なのかは判らない。
とにかく地球ではないらしい。
俺は彼女の住む村の近くの森の中に倒れていて、ちょうど森に木の実を採りに来た彼女と彼女の母親が偶然発見し、とりあえず家に連れて来たという。
さっきも言ったように、俺のような異世界からの来訪者はたまにいて、みんな自分の意思とは無関係に飛ばされて来た者ばかり。
いわば遭難者あるいは漂流者といった所だ。
ここまで話すと彼女は俺に尋ねた。
「…と、まずはここまでの現実を受け入れられる?」
「はっきり言って全く受け入れられない…けど…」
俺は窓の外に目をやった。
中世ヨーロッパの農村風の家々が所々建ち並んでいるのが見える。
欧米人が見たら牧歌的な田舎の風景なんだろうが、日本人の目から見ると、よくある中世風ファンタジー世界を舞台としたゲームや小説を彷彿とさせる眺めだ。
「…実はこれ巨大なテーマパークって事無いよね?あるいは夢かドッキリか…」
「異世界から来た人は必ずこの事実を否定したがるって聞いてたけど本当ね。残念だけど全て現実よ」
「う〜ん…少し聞いていいかい?」
それから俺は彼女に、この世界に関する様々な質問をした。
それによって、おぼろげながらではあるが、この世界の概容が見えてきた。
まず、この世界の技術水準は俺達の世界で言う中世〜近世レベルである事。
ただし、向こうの世界には無かった“魔法”という物が存在しており、例えば俺が今している翻訳指輪(仮称)のように分野によっては向こうの科学文明を凌ぐ技術も多々ある。
ちなみにこの指輪は特に高価な物ではないようで、異世界から飛ばされて来た人々のために教会が無料で各村各都市に配布している物らしい。
教会とはこの地域一帯で信仰されている宗教で、各地に神殿がある。
創造主たる“光の女神”を最高神とする多神教で、何となく日本の神道に近い。
俺が飛ばされて来たこの地域はヨーロッパ風の文化だが、もっとずっと遠い地にはアラビア風、アジア風、それに熱帯風の文化を有する国々もあるらしい。
文化とは土地々々の気候風土によって育まれるもの、これが偶然にも似通った物になる事は決して珍しい事ではない。
日本に似た国もあるらしい。
「そこには行けるのかい?」
どうせなら祖国に似た国で暮らしたいと思う。
たとえそれが戦国〜江戸レベルでもだ。
マリエルは苦笑を浮かべながら言った。
「行けるけど、普通に徒歩か馬で行ったら数年かかる距離よ。まあ途中で野垂れ死ぬのがオチね」
「…やっぱやめとく」
そんな命懸けの大スペクタクルアドベンチャーを慣行する気は無い。
それぐらいだったらここに住む。
有り難い事に言葉も通じるし…。
「まだ来たばかりで色々戸惑う事も多いと思うけど、すぐに慣れるわよ。町に行けば、あなたみたいに異世界から来た人達の集まりもあるみたいだから、機会があったら行ってみると良いわ」
「そうするよ」
マリエルは部屋を出て行った。
俺はベッドから出て服を着る。
いま身に付けているのは下着だけなのだ。
服は寝ている間に脱がされたらしく、枕元に綺麗に畳んで置いてあった。
パーカー、ジーンズ、靴下、それにスニーカー。
どれもこの世界では異質な服装だろう。
ジーンズのポケットの中の財布に三千円ほど入っていたが、自分を知る手掛かりになるような物は何も無かった。
それにしても全財産(かどうかは不明だが)三千円とは少ないな。
向こうの世界で俺は金欠だったんだろうか。
まぁ、何十万円持っていたって、この世界に来た時点で紙幣なんて紙クズだ。
貨幣も然り。
この世界、この地方には貨幣が流通しているが、それらは金貨や銀貨といった貨幣それ自体が価値を持つ物ばかりであり、鉄や銅で出来た百円玉や十円玉は無価値とみなされる。
現代ならニッケルやアルミの貨幣はいざという時の資源備蓄の効果もあるから違う意味で価値があるのだが、こんな少量では何の役に立つだろうか?

俺はふと考え込んだ。

目の前には10枚ほどの1円玉。

そして・・・・・・・・。

「ひょっとしてこれ、金属を研究してる人物に売ったら研究材料として希少金属扱いで買い取ってもらえるか?」
ボーキサイトからアルミを取り出す技術が開発されたのはようやく19世紀になってから。
それも当初は塩化アルミニウムからの還元で生産性も低くて貴金属扱いだった。
それから電気精錬法が開発されたが、消費電力が多くてすぐには普及しなかった。
ボカスカ量産できるようになったのは20世紀になってから。
電気精錬だから雷系の呪文が必要かも。
いや・・・・・・・・・発電機の原理なら俺にもわかる。コイルと磁石があればいいのだ。
もしかするともしかするかもしれない。
俺はビジネスチャンスの予感に心が震えるのを感じた。

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