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異世界物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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異世界物語 1

まず闇があった。
一面の闇だ。
自分の体すら見えない真っ暗闇だ。
ここは一体どこなんだろう。
俺は何でこんな暗闇の中をさ迷っているのだろうか。
思い出そうと記憶を探ってみる。
車のヘッドライトのような物が間近に迫って来るのが頭に浮かんだ。
その光景だけが強烈に印象に残っていて、あとの事は良く覚えていない。
良く良く考えてみたら自分の名前すら思い出せない。
おそらく事故か何かに遭って記憶喪失になってしまったのだろう…などと他人事のように冷静に分析してみる。
普通、自分が誰なのか分からなくなってしまったら、もっと焦るものだと思っていた。
人間は自分に関する記憶を全て無くしてしまうと逆に不安も焦燥も湧いて来ない物なのか、それとも俺だけが特にノンキな性格なのかは分からない。
それにしても、ここは一体どこなんだろう。
足は地に付いておらず、フワフワと空中を漂っているようだ。
まさか、これが死後の世界とか言うんじゃなかろうな。
この永久に続いているかのような闇の中を、未来永劫ただ漂い続けるだけだなんて事は無いだろうな。
もしそんな事になったら気が狂ってしまう。
いや、狂った方が楽かも知れん。
そんな事を考えていると、前方の遥か彼方に一点の光が見えた。
ああ、分かりました。
そっちに行けば良いんですね。
俺は導かれるように光の方へと近付いていった……。


「…う〜ん…ここは…?」
俺は目覚めた。
まぶしい。
体は何か柔らかい物の上に寝かされているようだ。
「○△□◇▽!!」
急に大きな声がした。
だが意味は分からない。
すぐに目が慣れてくる。
15〜16歳くらいの女の子が俺の顔を覗き込んでいた。
俺はベッドの上。
長い栗色の髪に緑色の瞳の可愛らしい少女だ。
服装は地味な色のワンピース、その上に少し汚れたエプロンをしている。
両方とも擦り切れていて所々修繕の跡がある。
ちゃんと化粧して綺麗な服を着たら、ファッション雑誌のグラビアを飾ってもおかしくないレベルの美少女になるだろうなぁ…。
ちょっと彼女に見とれてしまったが、気を取り直して尋ねてみる。
「あ…あの、君は…?」
しかし、やはり言葉が通じないようで、少女は不思議そうに小首を傾げるのみ。
「あぁ〜、参ったなぁ…どうしよう」
俺は頭を抱えた。
そんな俺を見た少女は、エプロンのポケットから何かを取り出して俺に差し出した。
見ると、小さな青い宝石のはめ込まれた指輪だ。
彼女は指輪を俺に渡すと、人差し指と親指で輪を作って左手の中指に通すジェスチャーをして見せた。
「つけろって事か…」
何だろう。
まぁ、婚約の申し込みでない事だけは確かだ…薬指じゃないし。
指輪はブカブカだった。
ところが次の瞬間、信じられない事が起こった。
緩かった指輪がシュッと締まって俺の指にぴったりフィットしたのだ。
「え!?えぇ!!?」
混乱する俺に彼女は再び口を開いた。
「どう、言葉は解る?」
「あぁ!君、日本語しゃべれたの!?」
「私、あなたの国の言葉なんて知らないわ。会話が出来るのはその指輪の力よ」
少女は笑って言った。
「これの…?」
俺は指輪に目を落とした。
この指輪が翻訳機の役目を果たしてるっていうのか。
そんなアホな…信じられん。
「その指輪には魔法が施されてるの。自覚は無いでしょうけど、あなたは今あなたの国の言葉でなく私達の言葉で会話してるのよ」
「…え?だって俺達今日本語しゃべって…あれ?」
「深く考えないで。混乱するわよ」
訳が分からなくなりかけたので、とりあえず彼女の言う通りにする事にした。
どこの地方の言語かは判らないが、とりあえず会話は成立している。
彼女は自分の胸に右手を当てて言った。
「私はマリエル、あなたは?」
「俺?俺は…ごめん、分からないんだ」
「自分の名前が分からない?もしかして記憶が無いの?」
「ああ…」
「ふ〜ん…あなたみたいにこの世界に飛ばされて来る人はたまにいるけど、あっちの世界にいた時の記憶を無くしちゃったっていう人はあんまり…」
「ちょ…ちょっと待って!」
俺は思わず彼女の言葉を遮った。
あまりにも聞き逃せない単語が出て来たからだ。
「今何て言った!?なんか“この世界”とか“飛ばされて来る人”とか聞こえたような気したけど…」
「あぁ、まずそこから説明しなくちゃいけないわよね…」

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