メロン・ワールド 86
「えっと……その……」
「メイリーン! 答えなさい!」
「ご、ごめんなさい。ラグーナが全てを捧げた御主人様がどんな人なのか、知りたいと思ってちょっとお話を……」
「それが何で、御主人様がお怪我をすることになるの!?」
「……ラグーナ達との関係を漏らすかどうか、確かめようとしたんだけど中々口を割らなくて……それで私も意地になって告白魔法を使ったら、貝丞君、自分で自分を殴って魔法を破ったのよ……」
「なっ……私に断りもなく、勝手に御主人様を試したの!?」
激高するラグーナ。そんな彼女を、貝丞はなだめた。
「ラグーナ、もうその辺で……」
ラグーナはメイリーンの主君であり、この地方の領主だ。そのラグーナが全てを捧げた貝丞の言動次第で、メイリーンの運命も、この地方の運命も左右されるかも知れない。メイリーンが貝丞の人となりを知りたいと思うのは、当然の希望だろう。とてもではないが、責める気にはなれなかった。
「でも……」
「俺なら大丈夫だ。気にしてないから」
渋るラグーナだったが、貝丞が重ねて言うと、ようやく頷いた。
「まあ、御主人様がそう言うなら……」
――ふうっ……
取りあえず、この場は収まったようだ。安堵した貝丞は、気になっていたことを質問してみることにした。
「あの……ところで、二人はどういう関係なんですか? メイリーンさん、さっきラグーナのこと呼び捨てにしてましたけど……」
貝丞を御主人様にしたことを知らせていた様子なので、ラグーナのメイリーンに対する信頼が厚いのは間違いない。だが、メイリーンのラグーナに対する物言いから考えると、どうやらただの領主と秘書の関係ではなさそうだった。
「ふふっ、メイリーンはもう一人の妹みたいなものなんです。私のお父様が、孤児だったメイリーンを引き取って育てていて、昔は良く一緒に遊んでいました」
「魔法も、私とラグーナは同じお師匠様に教わったのよ。さっきの告白魔法、今までに一度も破られたことがなかったから、ちょっとショックだったわ……」
「そ、そうですか……」
二人の答えに頷く貝丞。話を聞く限り、あの魔法はラグーナも使えそうだ。先程は咄嗟に自分に痛みを与えてやり過ごしたが、正直、もう一度同じことがやれるかと言われると自信がない。この二人に隠し事をするのは難しそうだなと思った。
続けて貝丞は、もう1つ気になっていることを聞く。
「あの、それと……メイリーンさんの他に、俺とラグーナ達の関係を知っている人は……?」
ラグーナが答えた。
「前にも言いましたけど、奥屋敷の女は全員知っています。後は、執事のアルフレッド爺やが。アルフレッド爺やは父に長く仕えた人で、例の遺言も私達と一緒に聞いたんです」
「分かった……」
貝丞はまた頷く。とりあえず、表屋敷ではメイリーンと、そのアルフレッド爺や以外にばれないようにすれば良いわけだ。
取り急ぎ、聞くべきことは聞いた。メイリーンの話ももう済んだだろう。貝丞は立ち上がり、部屋を出ようとした。ラグーナもメイリーンも、暇ではあるまい。
「それじゃ、また後で……」
「待ちなさい!」
「えっ?」
鋭い声でメイリーンに呼び止められ、貝丞は振り向いた。
「ま、まだ何か……?」
「詮議はまだ終わっていないわ」
「せ、詮議……?」
詮議とは穏やかではない。貝丞がうろたえていると、メイリーンは彼の正面に回り込んで来た。
「貝丞君がラグーナを大切に思っているのは分かったわ。でも、本当にラグーナを満足させられるのかどうか、確かめないとね」
「な、何を言って……?」
「ちょっとメイリーン! 私は御主人様の凌辱と調教に満足してるわよ!!」
声を荒らげて抗議するラグーナだったが、メイリーンはそれを無視してドアノブのつまみを捻り、カチャリと音を立てた。錠を下ろして外から開けられなくしたのだろう。そしておもむろに服を脱ぎ始める。あっと言う間に下着まで脱ぎ捨て、靴と眼鏡以外、産まれたままの姿になった。
「うわ……」
色白の裸身に、貝丞は圧倒される。知的な美貌と首から下の卑猥さがアンバランスだった。乳房はミュラよりほんの少し小さいぐらいか。貝丞の頭程度はゆうにある。ウエストはかなり細いが、その下の腰回りは豊かだった。
「さあ、貝丞君も脱いで。せっかくの衣装が汚れたら勿体無いわ」
「えっ? でも……」
口ごもる貝丞。一方ラグーナは怒気を露わにした。
「メイリーン! 私の御主人様に手を出す気なの!?」
「だから、貝丞君が本当にラグーナを満足させられる男なのか確かめるのよ。大体、奥屋敷じゃみんなで寄ってたかって貝丞君を輪姦してるんでしょ? 私が味わったって別にいいじゃない」
「そ、それは……もう、しょうがないわね。少しだけよ?」
ラグーナが折れる。もしかすると始めから、メイリーンがそういう行動に出るのは予想していたのかも知れない。ともあれラグーナの同意を受けて、メイリーンは貝丞の服に手をかけた。
「さあ、脱がせてあげるわ」
「ま、待ってください! こんな場所でいきなり……」
だが、貝丞は腰が引けていた。制止しようとすると、メイリーンは微笑を浮かべて言う。
「あら、こんな場所でなかったらいいのかしら?」
「え……? そ、そうですね……ここは表屋敷で外を誰が通るか分かりませんし、万が一聞かれたりしたら……」
「それなら大丈夫よ。この部屋は秘密の話ができるように、音が外に漏れない造りになっているから」
「えぇ……」
逃げ口上をあっさり封じられ、貝丞は進退きわまった。
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「あっ、あっ、ああっ、あっ……」