トレジャーハンター 5
ザビーナが体についた埃を払いながら出て来た。
その時俺は重要なことを思い出す。
「なぁ、雅さんはどこにいるんだっ?」
他にも聞きたいことはあるがまずはこれだ。
「ミヤビ〜?あぁ、あいつのお気に入りね。こっちよ。」
俺はおとなしくザビーナについて行った。
途中で階段を上がるとやっと窓があった。やはりさっきの場所は地下だったようだ。
外をのぞくと日の光が差し込み今が昼だと言う事がわかる。
遠くを見ると、朽ちたビルやらとんでもなくデカい塔がみえる。やっぱりここは、トウキョウらしい。
「ここよ。」
俺はとある部屋の扉の前に連れて来られた。
ガチャッ。
「お〜い、ミヤビ〜、いきてる〜?」
初っ端から人を不安にさせるような事を言うなと、心の中で突っ込みつつ後に続いた。
「うっ、ザビーナか?」
中にいた雅さんは四肢を無くした体を、壁に預けていた。
そして、雅さんの体に金髪の赤ん坊がしがみついていて、必死に乳を吸っていた。
「雅さん、生きてますか? えっとその子は?」
「? キミは一体・・・?」
そうだ、今の俺は姿が全然違うから誰だかわからないんだ。
どう説明すればいいか考えていると。
「あぁ、こいつはアンタが護衛してた、アスマだっけ?私の改造実験でこの姿になっちゃた。」
「なっ、まさか・・・」
雅さんは信じられないといった顔でこちらを見る。
当たり前か、男が女になるなんてあるは訳ないからな。
「えっと、まぁ、ここなら男が女にあるかもしれんが・・・二三質問していいか?」
「えっ、まぁ、はい。」
「職業は?」
「出原製薬の営業部です。」
「私にキミの護衛を依頼した上司は?」
「蒲原部長です。」
「趣味はたしかサイクリングだったかな?」
「いえ、主にゲームですね。」
「ふーむ、一応引っ掛けにもかからなかったし、本人なんだろうな。」
どうやら何とか信じてもらえたらしい。
「う〜〜〜?」
何の声かと思ったら赤ん坊がこちらを向いていた。
その顔は雅さんによく似ていた。
「雅さん、その子って、まさか・・・」
「あぁ、レオニオルに孕まされて生まれた子だ。名前はミナ。女の子だ。」
「そんな・・・」
「それよりも・・・。遊馬、キミはここから逃げるんだ。早くしないと奴が戻ってくる。」
「レオニオルならこいつが倒したよ。」
「えっ??」
雅さんはさっき以上に驚いた顔をした。
この姿であんな化け物を倒したなんて信じられないよな。
って、いうか・・・
「おまえは俺に一体何をしたんだ?そもそもお前は何者だ?」
「まあ当事者だし知る権利はあるわよね。」
ザビーナはそう言い説明を始める。
それは想像以上の驚きの内容だった。
俺に施されたのは、『強化遺伝子組替手術』と言うものらしい。
ザビーナの専門的な用語は理解できなかったが、簡単に言ってしまえば俺の身体の遺伝子情報を書き換えたらしい。
それにより肉体強化効果が得られたが、副作用として身体強化過程でY染色体がX染色体に変化してしまうらしい。
つまり染色体がXX・・・
生物学上の女になる訳で、俺のこの身体は女として生まれたらこうなっていた姿であるらしい。
ただ、この技術は未完成らしく、適合者でなければ肉体崩壊を引き起こしたりするし、元に戻す事も無理らしい。
そして、気になった雅さんの四肢再生の事を聞いてみたが、たまたま俺は適合したが(ザビーナによると適合したのは偶然らしいが・・・)雅さんは適合しないらしい。
「まあ、私は手足が無くてももう構わないさ・・・」
どこか諦めたように雅さんは笑う。
彼女は四肢が無いだけでなく、その胸はかなり巨大化していてお腹も膨らんでいる。
「丁度いい頃合だし、次の出産まであなたの世話は『彼女』にしてもらうといいわ・・・ついでに女と言うものがどう言うものか教えてあげて」
ザビーナは雅さんの娘を抱きあげると俺にそう言う。
娘も慣れているのか泣きもしないし、雅さんも止めない。
「いいのか?」
「少なくともザビーナは一定範囲信用できるからな・・・それに、君に子供の世話は無理だろ?」
雅さんに聞くとそんな答えが帰ってきた。