姫騎士・リリーの冒険 9
一方、必死の逃亡を続けている2人はリリーの索敵能力を頼りに夜の森を進んでいた。
「ハァハァ、リリー様、は、魔法が使えたのですか?」
「んーっと…使えるって言うとちょっと違うわ
私、魔法を制御出来ないの。さっきはなんとか成功して良かったわ」
「そうなんですか…。さっきの化物は?」
「さっきの化物はアルラウネ。食獣植物っていうのかな?
ただ、今の時期は繁殖期で所構わず、動物に種を植え付けこようとするの
体内に入った種はその動物に寄生して、養分を吸い尽くして発芽するわ
それにしても不勉強ですわね。後で尻打ちの刑に処します。……それまでに生きていればですけどね」
そうやって軽口を叩きながら、月明かりが差し込んでいる広場の部分にたどり着いた2人は、一旦その歩みを止めた。
「ミーヤ、これを見なさい」
そう言ってリリーは先程アルラウネの蔦を切った剣をミーヤに見せた
その剣は錆びてボロボロになっていて、もう一太刀も持ちそうになかった。
「アルラウネは蔦全体に溶解液が張り巡らされていて、剣などの攻撃が殆ど意味がないわ」
「えぇ!リリー様、ではどうすれば…」
「今の所、私のいつ成功するかも解らない魔法しか対抗手段はないわ」
だから逃げてるの。そうリリーは付け加えた。
「リリーさん、良かった無事だったんですね。」
「いやぁあ!!オークっ(ゴツーン)イタイ、リリー様、何をするんですか!!」
アルラウネから逃走中リリーとミーヤは偶然、悪い魔女によってオークになったエルンと再会した。
しかし、エルンと面識の無いミーヤはオークのエルンをみるなり叫びそうになるが、リリーに後頭部を叩かれうずくまる。
「お黙りなさいミーヤ、彼は悪い魔女にオークにされた人間なのよ。」
エルンをオークと叫ぼうとしたミーヤをリリーは厳しく叱る。
「ミーヤ、エルンに謝りなさい。」
「すいませんエルンさん。」
リリーはエルンに謝れとミーヤに言うと、事情を知ったミーヤは素直にエルンに謝る。
「まあまあ、僕の今の姿をみたら誰だってビビりますから気にしないで下さい。」
「はい……(でもいきなりオークを見たら誰でもビビりますって。リリー様もいきなり殴ることないのに〜グスン)」
「ありがとうエルン。だけど、どうしてここへ?」