姫騎士・リリーの冒険 2
この世のすべての物には魔力が宿る。その力の大小はあれど、リリーが集中
をして気配を探れば、始めて来る洞窟でも迷わずに王妃ののもとに駆けつけることができ、敵の布陣から
罠の配置まで彼女の前では筒抜けなのだ。
洞窟を進んでいる内に一際豪華な作りをした扉を発見した。
リリーは意識を集中して扉の中を探ると、中にいる数人の人の気配の中に確かに王妃の魔力を感じた。
扉の奥に母親の気配をしっかりと捉えたリリーはおもぐろに腰にかけた剣を抜き放った。
すると救出部隊の兵たちももそれに一瞬遅れて剣やら斧やら杖やらの思い思いに武器を構えた。
そしてリリーは部隊長の顔を見渡し、アイコンタクトをとった。
張り詰める緊張の糸……そしてリリー達救出部隊は扉を蹴り破り扉の奥へと突入していった。
そこは見るからに怪しげな儀式の祭壇だった。怪しげな松明やら生贄に使われたであろう羊の亡骸や骨が散乱し
部屋の隅々にまで見たこともない複雑な魔方陣が張り巡らせていた。
部屋の奥、祭壇の洞窟の祭壇には王妃が無造作に寝転がされていた。
王妃は気絶をしていたが、外傷は見当たらず攫われた時のドレス姿のままで、その周りには黒い魔術師のローブ
を着た魔法使いが5人いて、救出部隊の面々を待ち構えていた。
魔法使いの一人、誘拐犯のリーダーらしき人物ががこちらに振り向いた。
その魔法使いは、自分たちの悪事が暴かれ少数精鋭ながら自分たちの3倍はいる
敵を前にしても全く怯む素振りを見せず、ただ淡々と、自信満々に話しかけてきた。
「ずいぶんと早かったではないですか。流石は古くから高名な魔術師を沢山輩出してきた
アエラルセン王国だ。その情報網は素晴らしいの一言だ。こちらとしては、国王が病に倒れてからの
混乱でもう少し時間がかかると思っていたのだが……ね?」
「お父様が病にお伏せになろうと関係ないわ。その程度でこわれる程度の国が、300年の栄華を極めている
訳がなくってよ。さあ、早くお母様を解放なさい。今なら優しく縛り首にしてあげるわ」
「おおっ!!これはこれは、そこにいらっしゃるのは彼の王国の朱の武姫ではございませんか。
まさか本当に追いでなさるなんて……計算通りすぎて少々驚いてしまいます」
その言葉にリリーや他の救出部隊の面々は訝しむ。この男の言いようはまるで、本当の目的はリリー
だと言っているようなものだったからだ。
「フフフフ……、この私の言いようはまるで、本当の目的はそこの姫君だと言っている…そうお考えですね?
いいでしょう種明かしをしてしまうと、我々の本当の目的はそこの姫なんですよ。