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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 2

しかしこんな道端でベタベタしていると、決まって遭遇する出来事もある為に、籐弥の心中は穏やかではない。

「芹那さん…少し普通に歩こう。僕、逃げないから」

「芹那はこれが普通なんだもん♪」
腕どころか全身を添わす様な体制で、籐弥の顔を見詰める芹那。その瞳は真っ直ぐ籐弥だけを視界に捉え、頬は赤みをおびて、純真な少女の様な表情だ。

この表情はこの表情で反則物だよ……と嬉しいやらなんやらと芹那の表情を見詰めていた籐弥ではあったが、すぐそこに近付いている不穏な足音と気配に気が付くと、一気に表情が険しくなる。

足音と気配はあっという間に二人を取囲むと、籐弥の倍近くは有ろうかと思われる体格をした男が、ニヤニヤしながら二人の目の前に仁王立ちし、大鉈をギラつかせている。所謂山賊と呼ばれている輩達である。

「はいはい、嬢ちゃん、僕。通りたいなら、通行料頂こうかね…もっとも嬢ちゃんが身体で───
「汚い面下げて臭い息掛けるな、この下衆が!!」

またかと思い、腰に下げている刀に手を伸ばす籐弥を制したかと思えば、一気に相手の懐へ潜り込み、襟首を掴むと、そのまま巨体を左腕一本で吊し上げ、殺気を帯びた瞳で睨み付ける芹那。
怪力自慢の男でも持ち上げられるか分からぬ様な巨体を、腕一本で軽々と吊し上げる芹那の凄まじさに、周りを囲んでいた賊達は腰が引け、誰もがその場から動けないでいたが、吊し上げられた男は離せとばかりに腕や脚をバタつかせて、もがいていた。
すると、大鉈が手から滑り、芹那の頬を掠めて地面に落ちると同時に自身も地面に落とされた。

「…痛っ!!」

苦悶の表情を浮かべ、大鉈で傷付いた頬を手で抑え、籐弥に頬を見せないように急いで隠した芹那であったが、籐弥は見逃すはずがなかった。芹那の頬から血が流れたのを。
そして次の瞬間、芹那が男を吊し上げた動きよりも速く男の前に立ち、それと同時に刀を頸動脈に突き付けた。

「何してくれるんですか…。僕の大切な者に!!」

地を這う様な低い声を発しながら、首へ刀をめり込ませて行く籐弥。一気に首を跳ねるのではなく、徐々に刀を動かしているのは、籐弥なりの怒りの現れなのであろうか。
そして男の首が胴体から離れ、地面に転げ落ちた頃には、賊達は失禁しながら腰を抜かし、誰一人としてその場から逃げられないようになっていた。
付着した血を振り払い、鞘に刀を収めると、芹那が力一杯抱き付いてきた。

「ご主人様ぁ…芹那ね、とっても怖かったぁ」

先程の殺気に満ち溢れた雰囲気はどこへいったのやら…。少女の様な雰囲気を醸し出し、瞳を潤ませて、籐弥の胸に頬を擦りつけてまた甘え出している。
『さっきの芹那さんの方が桁違いに怖いんですけど…』などと、何時ものように心の中でツッコミながらも、頬を掌で優しく撫でる。
「頬…大丈夫ですか?痛くない?」

「ちょっとだけ痛いけど…平気だよ♪傷だってもう塞がってるもん」

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