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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 49

「…あの食べる塩の事かい?」
「はい、州の西部は海に面していますから、海岸沿いの村々では日天干しの塩を作っています。カルシウムたっぷりですよ〜」
「カルシウムって何ですか?」
「塩か…塩は良いぜ!人間が生きるには絶対必要な物だからな!」
アイシャのささやかな疑問はアルスの興奮の前に打ち消された。
「そうか〜、塩が取れるんだな!他には?」
「え〜と、ありません」
「「「……」」」
一同、再び絶句。
「な…何も無いのかい?塩以外に…」
「はい、土地が痩せているため農作物はほとんど穫れません」
「食糧が穫れないという事は…余所から買っているんですか?」
今度はエルザが訪ねる。
「はい、食糧はお隣のオルストリア州から購入しています。唯一の産物である塩は全部その支払いに消えます」
「何だよ〜!手前の食いブチすら満足に作れねえのかよ!?」
「しかもオルストリア州には多額の借金があります」
「……っ!!」
アルスはもう言葉が無い。
「待ってください!海があるんですよね?」
アイシャが言った。
「じゃあお魚が穫れますよ!」
「そうだ!そうだぜ!アイシャにしては冴えてるじゃねえか!」
「えへへ…」
「ダメです。先代のジェロルスタン伯爵の時代に漁場は乱獲で壊滅しました」
「そうだったんですかぁ〜」
「ちゃんと計画的に穫れよな〜!」
「あの私の家の話なのですが…」
エルザが言った。彼女の実家もノーマ皇国の地方領主だったのだ。
「財政難の時、山の木を切って売りました。燃料や木材として…」
「それだ!」
「それが…先代も同じ考えだったらしく、乱伐で領内の山地は全て禿げ山と化しました。まだ回復していません」
「またかよ先代…」
もうどうしようも無い状態であった。
前ジェロルスタン伯爵が無能だったのか…はたまたジェロルスタン領が治め難い地なのか…とにかくアルスが与えられたのはビブリオン国内でも最悪の州だった。
ここに来る前に町を通ったが、領民達もどことなく元気が無い。盗賊も出没して治安も悪そうだ。
「ちなみに州の南部には熱帯雨林が広がっていますが、そこから先はもうビブリオン王国の…というより私達の文化圏の外の世界です。南蛮の人達が狩猟採集の生活を送っているそうですが、どれぐらいの人がいるのか、どんな地形になっているのか全く不明です」
「ブンカケンって何の事なのか良く分かんないけど、つまりここは地の果て…人間の住む場所じゃないって事だね」
カルラが言った。
「アルス…こんな所を治めるなんて無理だよ。シャクだけど領地はガイアに返しちまおう。そんで代わりに金を貰って一生遊んで暮らそうよ」

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