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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 4

とりあえず二人は宿を探したが、当然そんなものは空いている訳がなかった。
宿屋だけではない。飯屋も酒場もどこも満席で店の前には入りきれなかった人間達がたむろしている。街の許容を遥かに上回る人数を抱え込んでいるのだ。
「宿はしょうがないとして、飯まで食えないとは…」
「保存食料もってて本当に良かったですね」
二人は一休み出来る場所を探し回り、やっと見つけた橋の下でワインを飲みながら干し肉と乾パンをかじった。アイシャが担いでいる大きな荷物は、実は大半が酒と保存食である。旅の必需品だ。
「兄さん、良いもん食ってるじゃねえか。ちょっと俺らにも分けてもらえねえかあ?」
声のする方を見ると5〜6人の男達が武器を手に立っていた。服装からして、どこかの正規兵ではなく、おそらく傭兵か盗賊か何かだろう。口調は穏やかだが、要するに全部置いてけと言っているのだ。
「嫌だね」
そう言うとアルスも剣を抜いた。彼の剣は男達が持っているのとは、かなり違っていた。
アルシア大陸で使われている剣は、片手持ちか両手持ちか、それに大小の差はあれど皆、両刃の直刀である。それに対してアルスの剣は細長い片刃の曲刀であった。
ヤマトだかヒノモトだかいう東の果てにある国の刀だそうで、非常に良質な鉄で出来ており切れ味は最高。しかも特殊な製法で頑丈。繊細さとタフさを合わせ持つ不思議な刀だ。
「そのヤマトサーベル…もしかしてアルスかい!?」
「あぁん?誰だ。追い剥ぎに知り合いはいねぇぞ」
男達の中に一人だけ混じっていた女が歩み出て来た。まさに爆乳という言葉が相応しい巨大な乳と安産型の巨尻を持つ大柄な美女である。モーニングスターという、棒の先がトゲ付き鉄球になっている棍棒を肩に担いでいる。
「私を覚えてない?ほら、ウェルシュ戦で同じ傭兵連隊にいたカルラだよ」
「ウェルシュ戦…あぁ!思い出した。傭兵のクセに乳とケツのでっけえ良い女がいるなぁって思ってたんだ!」
「私ぁ、変な剣の野郎だなぁって覚えてたんだよね!」
「まさかまた会えるとはなぁ」
「アンタもノーマ側で参戦かい?」
「おいテメェら!再会に浸ってんじゃねえ」
追い剥ぎのボスらしき男が言った。カルラはアルスの肩に手を回して言った。
「隊長!私やっぱりこの男と一緒に行動する事にするよ。悪いね」
「ふざけるんじゃねぇ!!なに勝手な事を言ってやが…」
グシャ!!
怒ったボスが剣を振りかざしてカルラを斬ろうとした次の瞬間、彼はモーニングスターで顔を潰されて即死した。
「はん!私がいなきゃあ、この前の野党の一団に全滅されてたクセに生意気言うんじゃないよ!!」
そして周囲の“元”仲間達を睨み付けて言った。
「アンタらはどうする?私達とやり合うかい?」
「い…いえ、カルラさん!滅相も無い」
「俺ら、カルラさんに従いますぜ!」

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