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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 123


その夜。カルラは砦の警備兵達に「夜間哨戒してくる」と言って一人で城壁の外を回っていた。
そうでもして気分を紛らわせでもしないと、とても気が持たなかった。
哨戒は非常時に備えて必ず二人以上で行うようにしていたが、この時ばかりは兵士達もカルラの心中を察し、彼女一人で行かせた(もっともカルラなら、この砦の兵全員の戦力をも上回るかも知れないが)。
「アルス…サフィア…」
カルラは自分でも気付かない内に、その二人の名を口にしていた。サフィアは未知の新兵器による傷を負って、現在アンブレラ市で治療中だという。アルスに至っては生死すら不明だ。
会いたかった。出来れば今すぐにでもアンブレラ市に飛んで行きたかった。
だが、それをする訳にはいかない。自分が居なくなったら誰がこの領地を守るのか。
エルザは知識はあるが、とても州を支えられる程の胆力は無かろう。それはアイシャも同じ。ライラもやや頼り無い。となると、やはり自分しかいないのだ…とカルラは考えていた。
そんな事を考えながら歩いていると、城壁の上から何やら人の気配がした。見上げると部下の兵士ではない、やや小柄な人影がキョロキョロと辺りを伺っていた。そいつは軽々とした身のこなしで城壁の上から飛び降り、カルラの前方5〜6mくらいの地点に着地した。
「……何してる?」
「うわっ!?何で居んねん、お前!!」
人影の正体はライラだった。木の棒の先端に吊した包みを肩に担いでいる。旅人の定番のアレだった。
「こんな夜中にコッソリ抜け出して、一体どこ行くつもりだい?」
「そんなん決まっとるわ!アンブレラや!アルスの大バカタレを探しに行くんや!!ついでにお前の奴隷も拾って来たる」
ライラはカルラをキッと睨み付けて言った。その目は泣きはらしたらしく赤かった。
「…そう、分かったよ」
「え?止めへんの?」
「止めたって行くだろ?それに私もアルスとサフィアの安否を知りたいし…ちょうど良かった。二人の事はアンタに任せたよ」
そう言うとカルラは、少しだけ気が晴れたような気持ちで微笑んだ。てっきり力ずくで制止させられると思っていたライラは拍子抜けだった。
「何や、お前案外話せるやん。よ〜し!お墨付きも出たし、後はアンブレラ一直線や!ほなな、カルラ!アイシャとエルザにもよろしゅうな!土産は買って来んからな!期待すんなよ〜…!!」
一気にテンションの上がったライラは、ベラベラとまくし立てながら走り去って行った。

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