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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 120


「この下衆めが!我々の神様に何という事を…!」
天幕の外では兵士達がアルスを荒縄で縛り上げていた。
「イデデデデ…ッ!!ケガ人だぜ!?もっと優しく扱えよ!!」
「黙れ!!本当ならこのまま縛り首にしてやりたい所だ!」
そう言うと兵士の一人はアルスの尻を思いっきり蹴飛ばした。
「ギャッ!!くぅ〜…チクショ〜、何が神様だよ…アイツはお前らが思ってるようなモンじゃねえんだぜ?」
「まだ言うか!?この大罪人め!少し体に教えてやる必要がありそうだな?」
そう言うと兵士はスラリと腰の剣を抜いた。
「おい…マズくないか?」
仲間の兵士が尋ねる。
「大丈夫、殺しはしない。死なん程度にちょっと斬ってやるだけだ」
「全然大丈夫じゃねえよソレ!クソ!解け〜っ!!」
とんでもない事を言い出した兵士にアルスは全身をバタつかせて暴れるがキツく縛られた縄は簡単には解けない。
剣がアルスに迫った。
「何をしている?」
突然割って入る若い男の声。アルスと兵士達が声のした方を見ると、フランツが腰に片手を当てて立っていた。
「ヘ…ヘッセン閣下!!」
「これは…その…」
今度は兵士達が焦る番だった。
「捕虜への虐待はノーマ皇国の軍規でも固く禁じられていたはずだ。皇国はもう無いが、お前達もノーマ軍人の端くれなら決まりは守らないとな…」
「は…はい…」
畏まる兵士達。彼らは兵卒なのでノーマ軍人という意識は薄いのだが、相手は少将だ。ヘタに口答えしない方が良い。
フランツは短剣を抜いてアルスの縄を切った。
「ふぅ…助かったぜ。ありがとよ」
「構わん。それより出立の準備だ」
「いよいよアンブレラに向けて進撃するのか?」
「いや、ヘッセン州に帰る」
「はぁ?」
「軍議の結果そうなったのだ。私は現在の状況ではアンブレラ攻略は困難だと主張したんだが、ロスト大佐は強行する気らしい」
「いや、する気らしい…って、お前だってそのために来たんだろ?二万人引き連れて来て何もせずに帰るのか?」
「ああ、帰るさ」
フランツはあっけらかんとした口調で言ってのけた。普通、軍隊というのは編成して動かすだけで大変な金のかかる物で、何もしないで帰るなど考えられない事だ。
「私は勝ち目の無い戦いはしない主義なのでな」
「兵士達はどう納得させるんだ?出鼻をくじかれて不満だろう…」
「いや、兵達は逆に喜ぶだろう。彼らの多くは領内からの徴収兵だ。帰れば仕事があり家族もいる。無事に帰れるならこんなに良い事は無い。それにもちろん彼らへの給料はちゃんと支払う。戦い無しで金だけ貰えるんだ。兵達にとっては最高だろう」
「だがよ、州の財政にとっては大赤字じゃねえのか?」
「私個人からすれば大きな出費だ。だがその金は領民に行くんだ。広い目で見れば領内の経済が潤う事になるのさ」
得意気に言うフランツ。

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