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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 114

シルビアはその薬を黙って飲む。ババロアはふと気付いて言った。
「それは毒薬か?」
それを聞いてゴホゴホとせき込むシルビア。
「人聞きの悪い事を言わないでください!ただの鎮痛剤兼睡眠薬です!二人とも重傷ですが命に別状はありません!」
「そうか…」
ちなみにサフィアはさっきからずっと安らかな寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。薬の効能とはいえ大した根性である。


「ん……?」
目覚めたアルスの目に最初に入って来たのは天幕の天井から吊られたランプだった。
「何だぁ…ここ…?あの世じゃなさそうだな…」
「気が付いたか?」
若い男の声。姿を見ようと首を動かすと、右肩に激痛が走った。
「いってぇ〜ッ!!!?」
アルスは思い出した。そういえば肩をやられたのだった。
「ハハハ…!それだけデカい声が上げられるなら、もう大丈夫だ」
「テメェ〜、人事だと思って笑いやがって〜…イテテ」
改めて声の主を見ると、アルスと同年代くらいの好青年だった。飾り気の無い質素な鎧を着ている所を見ると下級将校か下士官だろうか。だが、それにしては妙に堂々とした所がある。
「私の名はフランツ。旧ノーマ皇国の軍人だ。ここは反乱軍の幕営地。で、お前は捕虜だ」
「フランツか…一応、助けてくれてありがとよ。俺はアルス。お前ら反乱軍を討伐しに来た…が、今はこのザマだ」
「知ってるよ、アルス」
フランツは微笑んで言った。
「私は以前、お前に会った事がある。お前は覚えてないだろうが、お前がスカル平野の戦いでディアナ様を浚って逃げた時だ。あの時、私も幕僚達の中に混じっていたのだ」
「あ…あの中にいたのか!?」
ノーマ皇国の遺臣ならば当然アルスを恨んでいるはずである。だが目の前にいるフランツには少しもそんな様子は無い。
「安心しろ。別にお前に復讐しようなどとは思っていない。あの時点で既にノーマ皇国の敗北は決まっていた。お前が姫様を浚おうが浚うまいが、結果は同じだったはずだ」
「そうか!いや、お前は話が分かるヤツだな〜!ハハハハハ…痛っ!!」
治療を受けたとはいえ、まだ笑うと傷に響く。
そこへ、一人の兵士が天幕の中に入って来て言った。
「ヘッセン少将閣下!軍議が始まります。至急、大天幕へおいでください!」
「少将?そんなヤツここには…」
今、この天幕の中にはアルスとフランツしかいない。アルスは怪訝そうな面持ちでフランツを見た。
フランツは笑いながら言った。
「何を不審そうな目で見ている?私の本名はフランツ・フォン・ヘッセン侯爵。ヘッセン州の領主で旧ノーマ皇国軍少将だ」

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