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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 112

「それは私が説明いたします…」
士官の隣に控えていた年配の医務官が歩み出て言った。
「これが一見すると矢傷のようなのですが、肝心の矢は無く、と言って引き抜いたような痕跡も無い。調べてみました所、こんな物が出て来ました」
医官は手に握っていた物をババロアに見せた。
「小石か…?」
だが手に取って良く見てみると、それは鉛の玉だった。
「何だこれは?こんな物が肉を引き裂き、骨を砕いたというのか?」
「はい、殿下。恐らく相当な力で発射された物と思われます」
「分からん…よし!その者達に直接話を聞きに行くぞ」

アンブレラ城内の診療室ではサフィアとシルビアの治療が行われていた。
シルビアは敵の追撃から逃げる際に、左の太ももに傷を負っていたのだ。
「うぅ…」
「しっかりして。傷は浅いわ。クラン!もっと包帯を取って来て」
この場の責任者らしき30代前半くらいの女性医官が若い医官に指示を出す。
「わかりました、セリーヌ医長…って、わぁっ!!!た…大公殿下!!?」
部屋を飛び出した医官は、ちょうど様子を見に来たババロア達と鉢合わせた。
「あぁ、構わん。そのまま行け。ちょっと敵の新兵器について聞きたい事があって来ただけだ」
そう言いながらババロアはシルビアの寝ている寝台に歩み寄る。その前に女性医官が立ちはだかった。
「ダメです!この患者は今、話が出来る状態ではありません」
「何だ、お前は?見覚えの無い医官だな」
「も…申し訳ございません、殿下!」
ババロアと一緒に来た年配の医官が飛び出して来て言った。
「彼女はセリーヌと申しまして、先月、我が軍の医官として採用されたばかりで…」
だが、彼女の白衣の襟には医長を示す徽章が輝いていた。軍人で言えば将校クラス、中間管理職だ。
年配の医官は補足した。
「彼女は、ロムリアで医術を学んでいたそうでして…」
「ほう、あの“学問の都”ロムリアで…」
ババロアは改めてセリーヌを見た。
豊かな長髪に整った美しい顔立ち。白衣の上からでも判る大きな胸と尻の膨らみ。
しかし、目の部分に2枚のレンズのような物を着けている。確か視力を矯正するための器具だったと思う。目が悪いのだろうか。
そんなババロアの心中を見透かしたようにセリーヌは言った。
「眼鏡が珍しいですか?ロムリア辺りでは良く見られるのですが…」
「あぁ…いや、何だ…そうか。あのロムリアで医術を…それで30そこそこで医長なのだな」
それは本当に何気なく口にした言葉であったのだが…
「30ではありませんっ!!!!私はまだ29ですっ!!!!」
「す…済まん…!!」
どうやら年齢の話は彼女に取って禁句らしい。あまりに凄い剣幕で怒鳴られたため、ババロアは思わず謝ってしまった。
「も…申し訳ありません。私とした事が…つい取り乱しました」
セリーヌは改めて凛とした目つきでババロアを見て言った。

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