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バクス戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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バクス戦記 7



それから半年後…
「だ…騙された…!!」
アルマは目の前の光景に…自分が置かれた状況に絶望していた。
「何が『お前達は今日から奴隷ではない。ベルゼルグ帝国の兵士だ』だ!!俺達を兵士として採用したのはこんな事をさせるためだったのか!!?」
ここは戦場…最前線。
敵軍の矢や槍や投石器によって放たれた岩石が雨のように降り注ぐ中、彼らは木の板を持たされて横一列に並ばされていた。一応ベルゼルグ帝国の軍服を着ているが他に武器や防具などは身に付けていない。
バクス人の兵士達には当然のように支給される装備品が、彼らには全く与えられないのである。
「ギャアァァッ!!!?」
「グアァァッ!!!?」
次々と倒れていくダルマー人兵士達…バクス人兵士達はというと指揮官達と共に彼らの後ろで待機している。
そう、彼らはバクス人部隊の盾なのだ。
「ガァーッハッハッハッハァッ!!!!人間防壁じゃあ!!!破壊されても破壊されてもいくらでも補修の出来る人間防壁じゃあぁぁ!!!」
後方では豚のようにでっぷりと肥え太った将軍が高笑いしている。
その周囲を取り巻いている側近達の中にフェルディナントの姿もあった。
「ガーッハッハッハッハッ!!!フェルディナントぉ!!貴様の配下のダルマー人部隊は実に使えるのう!!ヤツラという盾のお陰でバクス人兵士の犠牲が少なくて済む!!実に良いぞぉ〜!!」
「…恐れながらガルーシャ将軍、私はこういう使い方をするためにダルマー人部隊を創った訳では…」
「はぁ〜っ!!?卑しいダルマーなど我らバクスの盾として使う意外に他にどのような使い道があると言うのだ!?あぁん!?」
「…いえ、閣下の仰る通りでございます…」
「そうであろう!!そうであろう!!ガァーッハッハッハッハァッ!!!!」
このガルーシャ将軍は極端なバクス至上主義者であり、ゆえに酷いダルマー差別主義者であった。
ベルゼルグ皇家に繋がりのある高位の貴族でもあるため逆らえない。
(せっかく創ったダルマー人部隊をこんな形で犬死にさせねばならぬとは…無念だ!)
フェルディナントは冷静を装っていたが、腹の内は憤りで燃えたぎっていた。

アルマ達がフェルディナントの下で兵士となって半年、ベルゼルグ帝国と隣国アルストリア公国との間に戦争が起こった。
当初ベルゼルグは一回の会戦で小国アルストリアを屈服させられると踏んでいたが、予想は大きく外れ、既に開戦から1ヶ月…双方かなりの犠牲者を出しながら戦争は続いていた。

…この日の戦いも終わり、何とか生き残ったダルマー人兵士達は宿営地に戻って、疲れ傷付いた体を休めていた。
「今日は何人死んだ…?」
「数える気にもなれねえよ…」
「俺たち戦争が終わるまでに全滅するんじゃねえのか…?」
そこへフェルディナントが姿を現す。
「お前達、薬を持って来てやったぞ」
「薬だって!?」
「普段はバクス兵が優先で俺達には回ってすら来ない医薬品が、どうして!?」
驚くダルマー兵達にフェルディナントは言う。
「補給部隊の友人に頼んで少し都合してもらったのだ。ガルーシャ将軍には内緒でな。私に出来るのはこれぐらいだが、せめてこれで傷を癒やしてくれ」
「フェルディナント連隊長殿…」
「グスン…なんとお優しい…」
フェルディナントの暖かい心遣いに皆は思わず涙ぐむが…
「ふざけんな!!俺はそんな事で騙されねえぞコノヤロウ!!」
一人が叫んだ。アルマだ。
「だいたいその薬だって元を正せばダルマーの女から摘出した受精卵から作られてる物じゃねえかよ!!みんな騙されんな!!」
「そういやそうだよな…」
「何か思わず凄ぇ有り難がっちまった…」
フェルディナントは呟く。
「またお前か、まったく可愛くないヤツめ…仕方ない。今度来る時は食糧を手土産に持って来るとするか…」
「そんなご機嫌取り要らねえよ!!それよりお前、作戦立案に関わる将軍の側近だろ!?豚将軍に俺達ダルマーを盾にするのを止めるように言ってくれよ!!」
「…それは難しいな。ガルーシャ将軍は生粋の反ダルマー主義者だから…進言しても聞く耳を持たんだろう」
「そこを何とかしてくれよ!お前は俺達の隊長だろう!?」
「…こんな事になって済まないと思っている。本心だ。だが今の私には何もしてやれん。耐えてくれ。そして生き残れ!生きていれば必ず機会は訪れる!」
「「「……」」」
皆、言葉が無かった。
このままではその生き残る事が絶望的だから何とかして欲しいと訴えているのだが…。

ところが、転機は意外にも早く訪れた。
それから数日後、アルストリア軍は拠点にしていた国境付近の要塞都市フォートを放棄して撤退したのだ。
ベルゼルグ軍は喜び勇んで進軍し、フォートの街を占領した。
「ガァーッハッハッハッハァッ!!!!腰抜けのアルストリア軍めぇ!!我が輩の勇猛さに恐れを成して尻尾を巻いて逃げて行きおったわ!!」
得意満面のガルーシャ将軍に側近の一人が進言する。
「しかし閣下、敵軍の撤退が余りにも鮮やか過ぎます。これは巧妙な罠では…?」
「そんな訳あるか!!今夜は祝いじゃあ!!宴の用意をせーい!!」

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