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世界征服
官能リレー小説 - ファンタジー系

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世界征服 47

真っ黒な封筒に血のような真っ赤な封蝋…なんとその印はザイン帝国の国章だったのだ。差出人の名はどこにも無く、いつ誰が郵便受けに入れたのかすら分からない。敵である魔族からの突然の手紙…正式な国書ではないようだが…。ロベルトは中に入っていた手紙を読み終えると秘書に渡して言った。
「…読んでみたまえ。我々にとってなかなか魅力的な事が書いてあるよ」
「はい………………こ…これは…!本当だとしたら素晴らしい事です!ですが…」
手紙の内容はヤマトのシノビ達に関する事であった。要約すると以下の如き文面である。

あのアマテラスのスパイ達には各国の皆様も頭を悩ませておられる事と存じます。この度、当方の考案いたしました“シノビ封じの魔法”の術式を同封いたしますゆえ、よろしければ是非ともお試しください。

「…どう考えても怪しすぎます!」
「うむ、それで同封されていたシノビ封じの魔法というのがこれだ」
ロベルトは今度は術式の書かれた別紙を秘書に渡した。それを受け取って眺めながら秘書は言う。
「…まさか、この魔術を発動させた瞬間、魔物の大軍が出現するとか…」
「はっはっは…有り得るな。だが本物でないとも言い切れない。一応、魔法局の方に回して研究者に調査させてくれ」
「分かりました」
秘書が部屋を出て行くとロバートは再び思案し始めた。
(あの魔法は恐らく本物だろうな…。魔族共の目的は分かってる。我々人類側の分裂だ。あの文面から、おそらくロザリアとグランディアにも同文の封書が届いているはずだ。魔法が本物と分かれば、中には実践する国も出て来るだろう。自分達の国中に光るアマテラスの眼を潰せるんだからな。さて、我々はどうすべきか…)



その怪しげな手紙は大グランディア帝国シュルツ皇帝の元にも届いていた。
「宰相、この手紙…一体どうしたものかのう?」
シュルツは例によって信頼する宰相バルトロメウスを呼んで意見を聞いていた。
「はい、陛下。宮廷魔術師達の見立てによりますれば、これは全く非の打ち所無き素晴らしい魔術だという事でございます。心配した罠の類も仕掛けられておりませんでした。魔術師達にによると古代魔術の魔術封じに良く似ているとの話でございます」
「我々の手では再現不可能と言われる古代魔術か…確かヤマトの魔術は大陸から伝わった物が独自の発展を遂げた物で、大陸では当の昔に失われた古代魔術の要素を色濃く残していると聞いたが、そのためか…?」
「はい、魔族の使う魔術も同様と聞き及んでございます。ゆえに魔族の魔術ならば、我々が手も足も出せぬヤマト魔術の使い手たるシノビ達を絡め捕る事が出来るという事でございましょう」
「う〜む、素晴らしい!だが魔族の目的は一体何だ?このような術式を我々に教えて奴らに何の利がある?」
「利というよりはヤマト憎しで動いたのでしょう。先日ヤマトにて魔物達の大規模な抗争が行われ、ヤマト国内のザイン派の魔物が一掃された…恐らくはこの事に対する報復かと思われます。あるいは我々人類側の結束を引き裂くのが狙いやも知れませんが…」
「はっはっは…人類同士に“結束”など、初めから無いような物だ。手を組みながらもお互い腹の探り合いなのだからな」
「確かに…して陛下、この“シノビ封じ”の魔法、いかがいたしますか?」
「もちろん有り難く使わせてもらうつもりだ。祖国を魔族に滅ぼされたソナタにしてみれば難しい心境やも知れぬがのう…許せ、バルトロメウス」
「もったいなきお言葉にございます陛下。私、帰化人の身でありながら陛下に宰相の地位にお取り立ていただいてから今日まで、陛下には感謝こそすれ、お怨み申し上げる事など何一つございません。どうか私めの事などお気になさらず、陛下は陛下の思うままにおやりくださいませ。あなた様はこの国の皇帝なのですから…」
「皇帝か…」
そこでシュルツは一息ついてバルトロメウスに言った。
「図らずもアルベルトの言う通りに事態が進んでおる…。のう、バルトロメウスよ。ワシの次の皇帝は、やはりアルベルトが良いかのう…?」
シュルツが皇位の継承に関する事を具体的に口にしたのは初めてだった。だが、年齢的にはそろそろ次代の事を考えねばならない頃合ではあったため、それを突然聞かされたバルトロメウスも特に驚きはせず、落ち着いた口調で答えた。
「私もアルベルト様が皇位を継がれるのが最良と存じます」
「ソナタもやはりそう思うか。国を治めるにはアヤツのような、凡庸で特に秀でた所も無く何事に関しても無難で無茶な事はしない性格の方が逆に上手くいくと…」

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