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世界征服
官能リレー小説 - ファンタジー系

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世界征服 40



大グランディア帝国は大陸北部に広大な領土を持つ大国である。しかし、その国土の大部分は実りの少ない痩せた土地であり、北端部に至っては永久凍土によって閉ざされていた。
その代わりと言ってはなんだが地下資源は豊かだった。広大な国土のあちこちに金・銀・銅・鉄・石炭・魔石などの大鉱脈が眠っており、それら鉱産資源の採掘・精錬・加工といった重工業が盛んに行われていた。
グランディア人は極寒の風土によって育まれた質実剛健な気質の持ち主だが、それでも…いや、むしろそれゆえに暖く豊かな南の土地に対する強い憧れを常に抱き続けていた。
グランディア帝国が国家の基盤たる労働人口を犠牲にしてまで、他の三国を大幅に上回る軍事力を有しているのも、その“憧れ”を現実の物とするためである。
帝国はその支配領域を南に広げようとして、たびたび南の国境線を越えて大陸中央部へ兵を進め、神聖ロザリア教国やアルティス商業連合など中央の国々とぶつかった。
特にロザリア教国、アルティス連合の二国はグランディアに“南侵”の動きがあると見るや、侵攻目標が自国および属国以外の国であっても惜しみ無い軍事的援助を行い、グランディアの南下を許さなかった。
グランディアの歴史は簡単に言えば、南侵してはロザリアとアルティスに押し戻される…この繰り返しであると言っても過言ではない。
そして建国から500年が経った今、“南侵”はもはや帝国の国是と言っても過言ではなかった。

「まったく、魔族のヤツらめ…一体どれだけワシの邪魔をすれば気が済むのか…」
帝都の中心にまるで市街を威圧するかのようにそびえ立つ要塞のような宮殿、そのバルコニーから城下を見下ろしながら大グランディア帝国の皇帝シュルツY世は呟いた。
「陛下、風が出て参りました。そろそろ中へお入りください」
年老いた執事がバルコニーに出て来てシュルツ皇帝に一礼しながら告げる。
「風が何だ?ワシのこの悔しさに燃えたぎる胸の内に比べれば北方山脈から吹き下ろす冷たい北風も生温いくらいだ…」
「お気持ちお察しいたします…」
シュルツは帝位に就くと歴代皇帝の例に倣って南侵のための準備を始めた。まず軍の参謀や大臣達と話し合い、侵攻のルートから兵站の補給、戦争中の外交戦術まで全てを綿密に計画し、上手くいかなかった場合の対策まで講じた。戦争はあらゆる事態を想定しなければならないのだ。そして国民の中から予備兵を徴集し、軍事教練を施し、正規軍に加えた。数年を要して準備を整えて「いざ出陣!」という直前、魔族が人類の領域へ侵攻して来て南侵計画は潰えた。
「はぁ」

執事も主であるシュルツW世の怒りは分かっていた。こう見えても若かりし頃は小姓として壮年であったシュルツ二世に仕え、その息子となる三世では王子直属執事として抜擢された。何れも南侵の準備を進めるもその度に実行出来なかったのだ。しかも勇者が失踪、聖剣行方不明と言う最悪の状態にこのグランディア帝国陰謀説が囁かられる始末のだが……魔族との戦となると武器や防具の需要が高まり皮肉にも経済は国始まっての好景気に沸いている。

「いっそのことザインとやらの考えも聞いてみる必要があるな」

「へっ!陛下!!!」

「よくよく考えれば……魔族にも文化がある。我々は何の権利があって彼らを滅ぼすとあるのかね?」

老執事はふと考える。

「勇者は気が付いているかもしれんな、はたして自分の手で魔族の国を滅ぼしても良かったのか……」

陛下はそう告げると部屋へと入る。

翌日、皇帝シュルツは彼の三人の息子を呼んだ。三人とも腹違いの兄弟で歳も近い。この三兄弟の内、誰に帝位を継がせるかは皇帝の悩みの種だった。こういう事は生前に自分の意志をはっきりさせておかねば、帝位継承に際して内紛が起こる火種となりかねない。そんな事になれば国の内外に皇帝家の痴態をさらけ出すようなものだ。諸国の物笑いになるだけならまだ良いが、ロザリア、アルティス、ヤマトに内政干渉の口実を与える事になりかねない。国内がゴタついている国に対して、自国民保護や治安維持と称して軍隊を送り込むのは四大国の常套手段である。治安維持という割には、兵を駐屯させるのは鉱山地帯だったり軍事戦略上価値のある都市に限られており、撤兵に際して莫大な額の賠償金を要求する事もあったりする。ただでさえ他の三国はグランディアの地下資源を狙っているのだ。付け入る隙を与えてはならない。

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