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世界征服
官能リレー小説 - ファンタジー系

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世界征服 36

(いや、まだだ。まだ終わった訳では無い。聖剣はいずれ我が手に入るのだから…)
グレゴリウスはゴホンと咳払いして、落ち着き払った様子で言った。
「それは出来かねますな。聖剣をそちらに届ける途中で万が一魔王側に奪われたりしては元も子もありません…。勇者アルス殿がこちらに聖剣を取りに来ていただきたい」
「それを申し上げるならば、アルス殿がこちらに赴く途上にて魔王側に殺められたり拐かされたりする可能性も捨て切れませぬ。やはり聖剣をヤマトに…」
「いいえ!アルス殿をロザリアに…!」
「猊下ぁ!!」
グレゴリウスとシノビが低レベルな口論をしている所へ再び部下がやって来た。
「何です!?我々は今とても大切な話を…」
「聖剣を持った騎士団が、いま到着いたしましたぁ!!」
「な…何ですとぉ!?す…すぐに会いましょう!ご使者の方!今のお話アマテラス女皇によろしくお伝えくださいよ!?…ホ…ホホ…ホホホホホ〜!!」
グレゴリウスは歓喜と興奮で込み上げる笑いを抑えられなかった。

騎士達は謁見の間という広い部屋に通された。彼らはさっきから小声でブツブツと話し合っている。
「ど…どうしましょう副隊長ぉ…」
「どうするもこうするも素直に言うしかないだろう…」
「『聖剣盗まれちゃいました』って言うんですか?そんな事言ったら教皇に怒られますよ…」
「ヘタしたら処刑されるかも…」
「お…俺、空気がヤバくなったら全力で逃げますからね」
「馬鹿だなあ…お前、そんな事したらロザリアの神聖騎士団に捕まって異端者として拷問にかけられて殺されちゃうんだぞ…」
そこへ…
「神聖ロザリア教国、グレゴリウス教皇猊下ぁ〜!!」
衛士が高らかに宣言し、扉が開いて教皇の正装に身を包んだグレゴリウスが姿を現した。
騎士達は片膝を付いて頭を垂れ、口上を述べる。
「きょ…教皇猊下におかれましてはご機嫌麗しく、ご尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じまする…」
グレゴリウスは(表面上だけは)慈愛と同情に満ち溢れた表情で騎士達に言った。
「よくおいでくださいました。お話は既にうかがっていますよ。魔王ザインによって祖国を滅ぼされ、王子様も命を落とされたとか…辛い旅路だったでしょう。しかしもう心配はいりません。あなた方の苦労は報われたのです。さあ、聖剣を…」
「あ…あの…猊下…じ…実は…」
「…どうしました?」
「その…怒らないでくださいね…?」
「怒る?私が?あなた方に対して?なぜそのような事をしなければならないのでしょう。面白い事を仰る。それよりも聖剣を早く…」
「あの…それが…無いのでして…」
「…………はあ?」
その瞬間、一瞬時間が停止したのを全員が悟った。
「……一応聞いておきますが…“無い”というのは一体何が無いのですか…?」
「…その…ですから“聖剣が”です。あの、情けない話なのですが、ケンカ別れした仲間に持ち逃げされてしまって…おそらくですがアルティス商業連合の方へ向かったかと…」
「……」
グレゴリウスはうつむいたまま何も言わない。よく見るとその体はプルプルと小刻みに震えていた。
「こ…こ…この…」
やがて彼はようやく絞り出したかのように喋り出したかと思うと次の瞬間、悪鬼のような形相で騎士達を睨み付け、天地も張り裂けんばかりの大声で怒鳴った。
「この大馬鹿者共があぁ―――――っ!!!!」
「さいなら〜っ!」
先程“空気がヤバくなったら逃げる”と言っていた騎士はそう言うと、一目散に謁見の間の出口に向かってダッシュした。

ドスッ!ドスッ!!

「うぐぅ…!?」
その騎士が扉を開けて廊下に飛び出した瞬間、彼は突如として突き出された数本の槍によって串刺しにされ即死した。
「ひぃ…!?」
「し…神聖騎士団…!!」
騎士達は恐怖に恐れおののいた。扉の向こうから白銀の鎧の上に純白の軍衣をまとった騎士達が姿を現した。彼らこそ教皇の親衛隊にして神聖ロザリア教国の最精鋭部隊“神聖騎士団”であった。
騎士達の顔からは血の気が失せ、もはや顔面蒼白を通り越して土気色だ。彼らは人生の終わりを覚悟した…。

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