世界征服 33
剣先を通して全身に凄い衝撃が伝わって来る。
並みの人間なら耐えきれず、一瞬にして跳ね飛ばされている所だろう。
だがアルスはそれに耐え、思い切り剣を薙ぎ払った。
「うああああああああ!!!!」
バキバキと音を立てて結界が壊れていく。
ヒビ割れは傷口から全体に広がっていく。
そして…
バキイィィィィン!!!!
「結界が…!」
「…砕けた!」
ザイン帝国。
「ふむ…破られてしまいましたか…。さすがは勇者、聖剣が無くともこの破壊力…」
一人呟くバトラス。
「…残念です。ヤマトの拠点はまだ失いたくなかったのですが…」
ヤマト国。
ツクヨミは叫んだ。
「やったぞアルス殿!よ〜し、全軍突撃じゃぁ!!!」
「「「オォォォォォォォオ!!!!」」」
要塞側。
「ヴァスティ様ぁ!!結界が…結界が破られましたぁ〜!敵勢が怒涛の如く城内になだれ込んで来ますぅ〜!」
「く…くぅ…っ!!こうなったら…」
ヴァスティは指揮官室を出て地下へ向かった。要塞の地下には巨大な魔法陣があった。
「こ…これは…!?」
ヴァスティの側近の大入道でさえ、今までその存在は知らなかった。それは大陸の魔術の魔法陣で、彼にはどんな魔術なのかサッパリ分からなかった。ヴァスティは言った。
「入道、何故バトラス様はこんな樹海を拠点に選んだと思う?」
「さ…さぁ…?人間共に見つかりにくいからでは…?」
「違う。この土地の地下深くに大きな魔力の流れがあるからだよ。ヤマト風に言えば龍脈とかいうやつさ。これはその龍脈を刺激して活動を活発化させる魔法陣なのさ」
「えぇ!?良く分かりません。つまりどうなるんですか?」
「フジ山が大噴火を起こす。それだけじゃない。それに続く火山帯も誘発して次々に噴火し、各地で大地震が起きる…つまりヤマトは終わりさ」
「な…何と恐ろしい…!!」
ヴァスティは魔法陣の前に立つと両手で印を結び、呪文を唱え始めた。
「冥・命・破・壊・滅・地・崩・魔…」
ズドオォォン!!
突然、地下室の壁が破壊された。
「な…何だ!?」
現れたのは五人。アルス、セレナ、ツクヨミ、ハンゾウ、サスケだった。
「ようやく見つけたぞ!貴様がこの要塞の司令官だな!?」
「チッ…もうここまで辿り着いたか…!」
「む!?何やらヤバそうな魔法陣じゃ!」
「あれは…地脈を呼び起こす魔術…!」
セレナはその魔術を知っていた。
「そ…それが発動するとどうなるんじゃ!?」
「とりあえず一番近くの火山が噴火します……あ!!ま…まさか…!?」
「その“まさか”じゃ!!フジ山は休火山じゃ!」
「僕に任せてください!」
アルスが飛び出し、剣を振りかざして魔法陣に向かって走り出した。
「おのれ小僧、邪魔はさせんぞ!」
その行く手に大入道が立ちはだかる。
「待てーい!!ソナタの相手はこの妾じゃあ!」
ツクヨミは剣を抜き、自分の倍以上もある入道に斬りかかった。
「小癪な小娘が…!」
入道は床の敷石を持ち上げて盾にし、ツクヨミの巨大な剣を受け止める。
「姫様!」
「助太刀いたします!」
ツクヨミに加勢するハンゾウとサスケ。
一方、アルスは魔法陣の前で呪文を唱えるヴァスティに斬りかかった。
ところが刃がヴァスティに触れた瞬間、バチィッと火花が飛び、剣は真っ二つに折れた。
「な…っ!?」
「ククク…私が呪文詠唱中、何の予防もしていないと思ったか?」
呪文を中断し、振り返ってアルスに言うヴァスティ。
「結界か…!」
「そうだ。私の結界などバトラス様のものに比べれば遥かに劣るが、その剣には辛かろう?」
先ほど要塞全体を覆っていたバトラスの結界を破壊した時点で、アルスの剣にはかなりの負荷がかかっていたのだ。
「どいて!アルス…」
セレナが叫んだ。
「雷(イカズチ)を司る精霊よ、契約により我に従いたまえ…サンダー!!」
彼女も魔術を使うのだ。次の瞬間、彼女の手から雷撃が放たれ、ヴァスティの結界を砕いた。