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世界征服
官能リレー小説 - ファンタジー系

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世界征服 29

二人はザインが旅から戻り次第、処刑される事が決まっていた。
王子はバトラスの魔術によって聖剣に関する記憶を洗いざらい探り出されていた。
ローラは聖剣をみすみす国外へ逃がした咎がある上に人間に戻ってしまった。もう一度ザインに抱かれ精を注がれ続ければ再び魔物となろうが、ザインにその気が無かった。
すなわち、二人とも用済みとなったのである。
バトラスは人間牧場の家畜となる道も提示したが、二人とも死刑を選んだ。
かたや元王子、かたや元将軍、プライドがある。
それにしても数日後には死が待っているというのに、二人の心は不思議と落ち着いていた。
もう覚悟は出来ているといった風である。
そこに、薄暗い石の廊下をカツカツとこちらへ向かって歩いて来る足音が聞こえた。
「ローラ、ついにお迎えのようだぞ…」
「ええ…」
だが足音は一人だけのようだ。その人物は二人の牢の前で止まった。鎧をまとった女の魔物だった。
「お…お前は…!?」
「…アレンじゃないか!」
アレンは黙ってローラと王子を見ると、布にくるまれた何かを牢の中へと放り込んだ。
「これは…!?」
それは牢の鍵と二人分の服、そして剣だった。
「アレン、一体どういうつもりだ…?」
アレンの予想外の行動に、呆気に取られながらも尋ねるローラ。アレンは口を開いた。
「フフ…信じられないっていう顔ね。でも人の好意は素直に受け取っておきなさい。あなた達が死のうと生きようと、今さらザイン帝国や世界の趨勢に些かの影響も無いでしょうからね…。助けてあげるわ。まぁ、かつてはザイン様の寵愛を奪い合った仲だし…。そのライバルに対する私なりの餞別と思ってちょうだい」
彼女も元が戦士なので、その辺りの物の考え方がスッキリしていた。
「そうか…ありがとうアレン」
「済まない、恩に着るぞ」
「気にしないで。今夜は月が無いわ。夜陰に紛れて逃げなさい。じゃあねローラ。フフ…王子様とお幸せに…」
「バ…バカ!私達はそういう仲ではない!」

二人は牢を抜け出した。かつての居城だ。内部構造は把握している。
「長居は無用だ。一刻も早く城を出よう」
「お待ちください。行く前に一人だけ会っておきたい者がいるのですが…」
「何だと?それは魔物か?」
「はい、私の娘です…」

リーナは寝室で眠りに着いていた。
「…スゥ…スゥ…」
「リーナ、起きなさい、リーナ…」
「う〜ん……あ…お母様ぁ?」
ローラが城に戻ってからも二人はずっと顔を合わせていなかった。
「お母様、角はどうしたの?お耳も短くなってるし…」
「うむ…その事だがリーナ、母は別れを告げに来たのだ。私はもうお前達とは暮らせない」
「えぇ!?ど…どうしてぇ…!?」
「それは私の口からは言わせてくれるな。後でアレンにでも聞いてくれ…」
「グスン…お母様ぁ、私お母様と離れたくない…」
泣き出すリーナをローラは強く抱きしめて言った。
「泣くなリーナ。お前は将来シドの妃となってこの国を背負って立つ身だ。母がいなくとも強く気高く生きろ」
「やだやだ!お母様、行かないで…!」
「…突然の別れを突き付ける母を許してくれ。母はいつもお前の事を想っているぞ…」
「お母様ぁ〜!」
ローラは後ろ髪を引かれる思いでリーナの寝室を後にした。

「別れは済んだのか?」
部屋の外で待っていた王子がローラに尋ねる。
「はい…」
「まだまだ母が恋しい年だろう…連れて行く事は出来ないのか?」
「…それが出来たらどんなに良いか…でもあの子は魔族…人間の中で生きていく事は出来ません…」
母娘とはいえもはや別の種族になってしまったのだ。共に生きるのは許されない事だ。
「しかし、これだけは言えます…私は、娘を愛していました…」
「うむ…」
ローラの瞳に光る物を見た王子は、それ以上は何も言わなかった。

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