世界征服 24
彼女は巻物を広げると絵の中の鳥が実体化する。忍者の中には祖先が大陸の魔導士だった事もあり忍者が使用する魔導は従来ある忍術と融合しているのだ。
「さて……どうなる事やら?」
自分は面倒臭い立場に立ったのだ。
「それにしても魔物もよく遭遇するわね」
彼女の足元にはオーグの死体が数体が転がっていた。
「あんまり派手にしたくないけどね」
彼女は騎士の後を密かに付ける事にした。
ローラは王子に抱えられ、馬上にいた。人間に戻れたがバトラスは密かに呪いをかけていてぐったりするほどの高熱を出している。
「ローラ!」
王子は直ぐに国境線を目指して馬を走らせていた。
「そこまでです」
バトラスは手を翳すと風が発生し王子が乗せた馬が切り裂かれた。王子は着地して剣を抜くもローラを抱えて何時まで持つか分からない。
「……さあ、ローラ、戻れば苦しみから解放されますよ」
ローラは持っていた短剣を喉に突き刺そうとするも手はその剣を落した。王子が立つ地面から魔法陣が出現し禍々しい闇が噴き出した。
「くっ……力が」
「聖剣の行方も知りたいからな……」
バトラスは倒れた王子を部下に拘束させ、黒いクリスタルの中で眠るローラを見た。
「魂まで染まって無かったか」
ザインはつくづく自分の魔力が劣っている事にヘコンダ。
「ザイン様、かつての城に眠っている“魔剣”を取りに行きましょう」
「?」
「もしかして先代魔王から何も聞いては無かったのですか?」
ザインが頷くとバトラスは慌てて説明をする。勇者が旧魔王領攻め込んだ時は、大軍を差し向けていたので楽観しており魔剣を使う事は無いと思っていたが勇者は聖剣を使い“火の神の息吹”、即ち溶岩を噴射させて魔物の大軍は瞬時にして飲み込まれ、一気に攻め込まれたのである。
「その剣を使えば」
「ただし正統な持ち主と認められるか、バトラスもわかりません」
ザインは直ぐに向かった。
オオエ山……古来より鬼が棲む山とされており、そこをねぐらにしているシュテンドウシは鬼一族の頂点に立つ者でもある。妖怪の中では品格を持ち、むやみに人間を襲わないのだ。真田家とは一族ぐるみの付き合いでもある。
「……ツクヨミのじゃじゃ馬姫に真田の当主様か」
「シュテンドウジ殿、先日の事だが」
「分かっているさ、そこに居る大陸人が勇者か」
酒を湯水の如く呑むのでセレスはその匂いで倒れそうになる。
「……アルスと申します」
「大体の事は分かっている、ワシの祖先も社会に失望し人間を捨てて禁忌の力により鬼となったからな……最も後悔はしていたようだが。アルス殿はいい人に巡り合えた、だからこそ魔にならずに済んだ。その証拠にヤマトの国を脅かすザイン軍を撃つと申した」
「シュテンドウジ殿……」
「このシュテンドウジ、ヤマトの神々に仕える僕を束ねる者として協力しよう」
シュテンドウジは直ちに各地の大妖怪に遣いを出し、部下を連れてオオエ山に馳せ参じるよう求めた。
ツクヨミは言った。
「妖怪達にしてみれば、シュテンドウジに着くか、ザインに着くかを問われる訳じゃ…これは図らずもヤマトの妖怪界の天下分け目の決戦となりそうじゃ!面白うなって来たわい!」
なぜか張り切るツクヨミにセレナは尋ねた。
「シュテンドウジさんはヤマト中の妖怪の盟主なんでしょう?」
「うむ。ヤツは既に数百年の時を生きておる。歌にもあるではないか。♪むかし丹波の大江山、鬼共多く籠もり居て、都に出ては人を喰い、金や宝を盗み行く…」
「すいません。知らないです…」
「文部省唱歌じゃぞ?まあ良い。しかしながら当然の如く、シュテンドウジに従わぬ勢力も存在しており…」
「そいつらがザインの配下になっているんですね」
「その通りじゃ」