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世界征服
官能リレー小説 - ファンタジー系

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世界征服 23

「「「オーッ!!!」」」

そして一行は神聖ロザリア教国の都を目指して道なりに進んで行った。ところが行く先々の町や村で目にしたのは、宮殿と美を競うような神殿に華々しく着飾って威張り散らす神官達と、それとは対照的に、あばら屋に住みボロをまとった貧しい人々だった。
「隊長、私は何だか聖剣をロザリア教国に渡すのが嫌になってきました」
「私もです。庶民達は神殿に納める供物のために自分達の食べる物すら削っていると聞きました。それも全てあの神官達の懐に入っているかと思うと腹が立ちます!」
「まあ待てお前達…王子様が最後に何と言ったか思い出せ。聖剣をロザリア教国に持って行けと…そうおっしゃったではないか…」
隊長は騎士達を説き伏せた。もう一度多数決で決め直すという事にはならない。それだったら意見が合わず去って行ったアルティス派は何だったのだ。それに前に立ち寄った町の領主に聖剣の事を話してしまった。直ちに早馬が飛び、聖都のグレゴリウス教皇にも伝わっているはずだ。今さら「やっぱりアルティスに行きます」なんて言っても国境辺りで絡め捕られて聖剣は没収、自分達は反逆罪か何かで即死刑か一生強制労役にされるのがオチだ。
「……」
騎士達は黙って隊長の言葉を聞いていた。その夜、一行は野宿をした。

翌朝。
「やられたぁ…!!」
皆は隊長の叫び声で目覚めた。何と数人の騎士が聖剣と共に姿を消したのだ。いなくなったのは比較的若い騎士達。血気盛んで正義感に溢れ、ロザリア教国の不条理な現状に憤慨していた者達だった。慌てて辺りを捜索したが、夜の内にかなり遠くまで行ってしまったらしく、もう発見出来なかった。
「ど…どうしよう…聖剣が…人類の唯一の希望が…」
「た…隊長!?」
隊長はバッタリと倒れた。ショックに加え、これまでの心労もあった。慌てて最寄りの町まで担いで行って治療を頼んだが、神官がやって来て訳の分からない祈祷をされただけ。その夜、隊長は息を引き取った。

一方、聖剣を持ち逃げした騎士達は…
「ハァ…ハァ…こ…ここまで来ればもう安心だ…」
「おい、この聖剣どこの国に持って行く?」
「正直あの糞坊主共の手に渡らなければどこでもいいな…」
「あぁーっ!!?」
突然、一人が大声で叫んだ。
「何だ?素っ頓狂な声出して…」
「こ…ここ…これ…!」
彼は震える手で、大切に布にくるまれた剣を差し出した。
「げえ!」
「これは…!」
それは聖剣ではなかった。武器屋で二束三文で投げ売りされているような駄剣だったのだ。
「確かに隊長の枕元に置いてあった剣を持って来たのに…!!」
「まさか偽物だったとは…!」
「チクショウ!してやられた」
「いや、あの隊長がこういう事を思い付くとは思えない。もっと前からすり替えられていたと考えるのが妥当だろうな…」
「…という事は…アルティス派の奴らか!!」
「…おそらくな」
「あいつら…!妙に潔く諦めたと思っていたら、そういう事だったのか!」
「どっちにしても俺達は偽物の聖剣を掴まされたんだ。もう皆の元へは戻れんし…これからどうする…?」

その頃、本物の聖剣を持ったアルティス派の騎士達は、意気揚々とアルティス商業連合を目指していた。
「なぁ、あいつらもう偽聖剣に気付いたかな…?」
「そうだなぁ…あれから数日経ってるからな」
「気付いたら追って来るだろうか?」
「いやいや、こういうのは意外と分かんないもんだぞ?聖剣は布で厳重にくるんであるだろう」
「グレゴリウスのヤローの前で布を解いて初めて判る…か。さすがにちょっと気の毒だな…」
「確かに仲間達には悪い事をしたが、この聖剣はロザリア教国の生臭坊主に渡す訳にはいかん。グランディア帝国の糞オヤジにもヤマト国の女狐にも渡せん。どいつもこいつも自分達の事しか頭に無い奴らだ。信用出来るのは民主共和制のアルティス商業連合だけだ」
「しかし、そんなにアルティス連合が良いのか?まあ、俺は坊主が嫌いなだけだからロザリア教国以外ならどこでも良いんだが…」
「この中ではマトモと思うが……」

アルティス商業連合もマイナス面はある。算盤勘定で動いてしまう悪癖があるのだ……と言うのも大陸にある三カ国を中心に人の往来はかなりあるからだ。ヤマト国の一般的に“辺境の大国”と言うほどであり、ここまで旅をする者は限られている。

「(やれやれ……これでは勇者も失踪したくなるわね)」

聖剣を持つ騎士達を見て呆れる一人の少女……彼女はハンゾウの部下の一人であり、アルスの言葉をゆがめた者を特定するべく動いていた。その途中に聖剣を持つ騎士達を見つけしばらく様子を見ていたのだ。

「(万が一の時は聖剣を奪い、ヤマトの地でハラキリも辞さないか)」

少女はクノイチと呼ばれる忍者……大陸に置いてスペシャリストの代名詞で、任務に取り返しがつかない事すれば自ら命を断つ程ストイックな生き方をする。

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