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FANTASYC PSY
官能リレー小説 - ファンタジー系

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FANTASYC PSY 35

だから、この村から出て行くといわれた時には必死で縋り付いて留まるようにしていた。
(今思えば私も変わったわね)
心の中で思いながら隣にいるであろう邦人を見ようとして……誰も居なかった。今更ながらベッドにはメアリーしかいなかった。
「えっ?嘘でしょ?まさか、私が寝ている間にもう……」
出て行ったのと続けそうになって不安が募り、慌ててシーツを体に巻いて玄関に走る。扉に手を掛けようとして外から開いてメアリーはバランスを崩しそうになる。
「おっ、起きた……のか」
前髪が濡れている邦人がメアリーを支えて言葉を続けようとするが……真赤になった顔に血液が集まっているのを感じて火照っているのを自覚しそうになる。
昨日の夜、好きと告白され、結ばれた少女がシーツ一枚というシチュエーション。
「よかったぁ……出て行ったのかと思ったわよ」
安堵からか目に涙を浮かべるメアリーに邦人は苦笑する。が、今の彼は理性と本能が激しくせめぎ合っている最中だった。
向けそうになる視線を必死でそらす事でメアリーを意識しないようにして。
「いやいや、流石に恩人に黙って出て行く事はしねぇよ。けどよ……」
歯に物が詰まったような言い方をする邦人。
「幾ら慌ててたからってその格好はちょっとな」
「えっ……」
自身の姿を再確認するメアリー。その数秒後にさらに慌てたような声を出すメアリーだった。




シーツだけだったメアリーが自身の衣服を整えて、朝食を作る。その間に邦人は食器を出して準備を整える。
この一年、互いにやり慣れた事であり、今日でそれも最後になるだろう。楽しかった事も、苦しかった事も全てをひっくるめて、今となってはいい思い出だ。
感慨深くなるとほんの僅かな寂しさと哀愁が漂う。出そうになる涙を目をこする事でごまかし、堪える。
せめて、最後ぐらいは笑っていたい。邦人がしようとすればするほど、ぎこちなくなる。

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