FANTASYC PSY 31
「好き・・・大好き。お願いだから・・・行かないで。
私を・・・ひとりにしないで・・・」
「・・・あっ、うっ、ううっ!?」
うかされたようにつぶやきながら、メアリーは邦人を抱きしめ、さらに奥へ誘おうと腰を浮かす。
こんな男のために、処女を奪われ、激痛に苦しみながらも、なお邦人を留めようとしているのだ。
邦人は急に胸が苦しくなり、ポロポロと涙をこぼした。
メアリーの愛情に胸が熱くなったとか、罪悪感に耐え切れなくなったとか、そういうことで涙が出たのかはわからない。
ただ言葉にできない何かがあふれて、そこから涙がこぼれたとしか邦人には表現する術がなかったのだ。
邦人は泣いた。あふれてくる思いが何なのか、こんな自分をこんなにも想ってくれるメアリーの心に触れて、ただひたすらに泣いた。
こんなにも泣いたのは、彼が子供のとき以来のことであった。
メアリーの愛で浄化された邦人の涙。
それは心あらぬメアリーの心を再びこちら側の世界へと引き戻す。
「・・・ん・・・あ?邦、人・・・?」
気がつけば目の前でひたすら泣き続ける邦人の姿に、メアリーは動揺した。
手負いの獣のように荒れ狂っていた邦人が、いつの間にこんなにもしおらしくなっているのか?
それが自分が我知らずにつぶやいた告白のせいだとは夢にも思わぬメアリーであった。
「あ、う・・・!ご、ごめん・・・!オレ・・・メアリーにとんでもないことを・・・!」
邦人は己のしでかしたことの大きさにおののき、涙する。
許してもらえるなんて思ってはいないが、それでも言わずにいられなかったのだ。
しかしメアリーの答えは邦人の予想をはるかに超えるものだった。
「よかった・・・正気に戻ったんだね、邦人。
私のことなら気にしないで。
大好きな邦人と1つになれたんなら、これくらいの痛み、何ともないから・・・」
「・・・!!」
何とメアリーはすべてを許し、邦人を抱きしめたのである。
それは邦人の中の邪心がすべて浄化された瞬間であった。
「め、メアリー!お、オレ・・・!」
「いいのよ、邦人。それより邦人のほうこそ大丈夫?
男の人ってその、我慢するの大変なんでしょう?」
村で教わった知識を総動員してメアリーが心配そうに声をかける。
初めてなのに、それでも自分に気を使ってくれることが邦人にはうれしいやら申し訳ないやら。