屍美女の大群 174
その行為の意味するところを知り、狐娘は暴れた。
彼女らは自分から駿の精液のみならず、その残り香までも奪おうとしているのだ。
屍美女としての幸福を奪われる恐怖にもがく狐娘。
しかし押さえ込まれた身体はびくともしない。
そんな中、彼女はさらに絶望的なものを目にすることになる。
騒ぎ・・・否、狐娘についたかすかな男のにおいをかぎつけてまた数匹の犬娘がやってきたのだ。
彼女ら獣型は五感が鋭い。下手をすればその数はどんどん増していくだろう。
やってきた犬娘たちは夢遊病者のように狐娘に近寄ると、先客と同じように胸や身体をなめ始める。
その感触はとても気持ちよく。そしてそれ以上におぞましかった。
「〜〜〜ッ!!〜〜〜ッ!!」
口をふさがれた狐娘は声にならない絶叫を上げた。
しかし助けが来ることはない。彼女は屍美女で、1人抜け駆けした狡猾な狐なのだから。
哀れな狐は犬娘たちが飽きるまでの3日間、延々とむさぼられ続けるのであった。
――――
・・・その頃。犬娘たちが狂宴を楽しんでいたその近くで、いくつかの黒い影が彼女らの様子をうかがっていた。
「・・・ちくしょう、ここにも奴らがいやがる。
連中、いったい何匹この島にいやがるんだ!?」
「大声を出すなっ。気づかれたらおしまいだぞっ」
それはこの島に流れ着いた留美たちの仲間、その生き残りであった。
しかしここにいるのは残念ながら全員ではない。男が2人だけだ。
死に物狂いで施設から脱出した彼らは、襲われた恐怖から散り散りになってしまった。
運よく合流できた2人は、屍美女から逃れつつ他の仲間を探して歩いていたのだ。
「しかしあれからずいぶん時間がたったな。
みんな、まだ生きてるんだろうか・・・?」
「けっ、生きてるわけねえだろ、みんな死んじまってるさ。
オレたちでさえ、苦労したんだからな」
生き残った彼らの身体には、腐葉土がたっぷりと塗りたくられている。
五感の鋭い獣型から逃れるための工夫だ。
屍美女から追われながら見つけた偶然の産物。
他の仲間もこれに気づいていれば生き残っている可能性もなくはない。
しかし今まで便利な生活に頭までどっぷりつかっている仲間たちがこの方法に気づいたかどうかは運まかせに近い。
相方の男が全滅説を言うのも無理はなかった。
しかし男はあきらめない。いや信じたくなかったと言うべきか。
なぜなら彼の探している仲間の中に、どうしても失いたくない人物がいたからだ。
「・・・マリナ。生きていてくれ・・・!」
男は夜空を見上げ、祈るようにつぶやいた。
彼が探している人物は真堂マリナ。彼の最愛の女であった。