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モンスターハーレム 第2章
官能リレー小説 - ファンタジー系

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モンスターハーレム 第2章 377

「ええ、お蔭様で。それに気にはしていませんよ。所で、こちらには何か御用で?」
「サルスベリの嬢ちゃんに用があってね。用件は孫娘のことさね」
「孫娘……エリュシュア様の事ですか」
「エリュシュア?誰だそいつ?」
話を置いてきぼりにされていたラグがロカに問う。
「私の可愛い孫娘だよ。けどね、少々特殊な事情があってそれをサルスベリの嬢ちゃんに相談しに来たのさ」
そう言ったっきり、ボーデンはそれ以上聞くなとばかりに口を閉ざした。
あまり話したくは無い内容だろう。
「所で、あのお嬢ちゃんは放っておいていいのかい?気絶しちまっているようだけど」
ふいっと視線を向けた先は白目を向いて倒れたミミの姿。
「おい!!しっかりしろー!!ミミー!!」
それを見て慌てるラグであった。



一騒動後、メイドゴーレムに連れられ案内されてボーデンが離れた直後のこと。
「旦那様、一つ忠告しておきます。何があっても、絶対にボーデン様を怒らせてはなりません」
「……?どういうことだ」
言っていることが理解できず、ラグが尋ねると、ロカは無表情ながらも真剣な表情で説明した。
「ボーデン様は三王の中で最も穏やかな性格をされていると言われています。
 普段は度量が広く、多少の事では怒る事もないほどに。
 しかし……もしその逆鱗に触れれば、三王の中で最も恐ろしいと言われているのがあの方なのです。
 もし孫娘であるエリュシュア様の心身に傷つけよう物なら……」
「オレの命はない、ってか?」
ロカは無言で首を横に振る。そんな生やさしいことでは済まないと言わんばかりに。
「………この迷宮が崩壊します。旦那様どころか、魔物全てが死ぬ事になるでしょう」
「何を大げさな。そんな訳が……」
冗談だろうと笑い飛ばそうとするも、すぐにその口は閉ざされる。
ロカの、有無を言わさぬ厳しい視線によって。
「……旦那様。触れてはいけない怒りとはどのようなものだとお思いですか?」
「そりゃあ、怒鳴り散らしたり、鉄拳食らわせたりとか?」
「本当に触れてはいけない怒りというものは、その純粋なまでの殺意と憎悪ゆえに誰も逆らえず、抗うことができないもの。
 この私ですら、あの怒りを向けられれば身体は震え、戦うどころか呼吸すらままならなくなるでしょう」
一呼吸を置いて、ボーデンが起こした事を語る。
「あの方はかつて攫われ、陵辱され、自我崩壊させられた教え子の為に、人間共が領地と呼んでいる場所を火山に変えたのです。
 都市1つが丸ごと火口に呑み込まれ、周辺の村や森は溶岩流と高温の火山ガスで焼き尽くされ、我々魔物ですら生きていけない不毛の地と成り果てました」
あまりにも圧倒的な出来事にそれこそ冗談だろうと笑いたかったが、ロカの真剣な様子から、それが実際に起こった事だろうと理解した。否、理解させられた。
「ボーデン様は人間との戦いで息子を亡くされております。それはエリュシュア様も同様。
 彼女はボーデン様の息子である父親もその嫁の母親も亡くされております。
 ボーデン様にとってはエリュシュア様は唯一残された肉親。だから、殊更大切なのでしょう」
「……そうか」
そう呟いて様々な思いがオレの中で渦巻いていく。
オレは難しい事を考えるのに向かないタイプであるが、それでもできるだけ理解しようと努めた。
理解できなければ死ぬ。
そんな予感があったから。
今思えば、それはオレの一部となった魔物たちの警告だったのだろう。
できることなら、今すぐここから逃げ出したい。
これ以上、わけのわからない、やっかいな事態に巻き込まれたくない。
そんな恐怖が全身を駆け巡る。
しかし相手は年寄りである。どこからどー見ても、バーサンである。
確かに自分より先に生まれ、たっぷりと経験を積んだ人生の先達とは言え、老婆を前に逃げ出すなどオレのプライドが許さない。
湧き上がる恐怖を無理やり心の奥底に押し込め、オレはその口を開いた。

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