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おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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おてんば姫、ファニーの冒険 27

「フー、こいつは手ひどくやられたな」
ヘンドリック王は額を手で押えながらため息をつく。
「はい、特に魔法学院と神殿の女子寮の学生は全滅となっております。これは長期的に見るとわが国に深刻な影響を与える事は確かです」
「他には誰が攫われたんだ」
「他は娼婦や一般庶民の子女、それに貴族の子女もおります。正確な人数はいまだ把握できておりません」
報告するハワード伯も受けるヘンドリック王もまったく寝てない状況だ。
「そうか、とにかく被害状況の確認を急いでくれ。次に連中に足取りはつかめたか」
王は軍務大臣であるコルト子爵に顔を向けた。
「轍の後からして連中は北西部のメメール山脈に逃げ込むつもりでしょう。今軽騎兵小隊を偵察に向かわせましたが、あいにく生き残っているのが技量未熟なものしかおりません」
コルト子爵は歴戦の勇者であったが、今日は寝不足のせいかフラフラしてる。
「追撃どころか発見も難しそうだな」
執務室に重い空気が流れた。
重い空気を打ち破ろうとヘンドリック王が口を開いた瞬間、ドアが激しく開けられモンティ候が飛び込んできた。
「どうした、また奴らが攻めてきたのか」
「違います。実はとんでもないことが分かりました」
いつもは悠然と構え、何があっても動じない財務大臣が息を切らせて知らせることなどとんでもないことに違いなかった。
「城の被害状況を調べたところ宝物庫に賊が進入し、国宝である闇の翡翠と、王太子の形見の剣が盗まれておりました」
闇の翡翠は強大な魔力がこもった魔石で使いようによっては国一つ滅ぼす事もできると言われていた。
また王太子の剣も名匠といわれたクルード師が作った名品中の名品だ。
王太子が生まれたときに、ヘンドリック王自らがクルード師に頼み込んで作った思い出の品だ。
「くそ、奴ら人の思い出に土足で踏み込みやがって。もう許さん、俺が討伐にでる」
今にも飛び出そうとする王を、重臣三人が無理矢理押さえ込んで止めた。

それから一週間が経ち、ようやくファニーはモンデール王都についた。
「なんじゃこりゃーーーーーっ!!」
帰郷したファニーの第一声がそれだった。
無残に壊れた街と城、哀しみに打ちひしがれ途方に暮れる民。ファニーの知っている平和なモンデールは跡形も無い。
アンナは王都の惨状に唖然とし、ファニーの言葉使いをたしなめる余裕すらない。
護衛部隊も国を出た時と帰った時の大き過ぎる落差に戸惑うばかりだ。
そんな中、一人冷静に王都の様子を観察していたように見えたティーエは、血が滲むほどに拳を握り締めて、沸き上がる怒りを必死に抑えていた。
しかしいつまでも立ち止まっていてもいられない。
ファニーは王城へと急いだ。
まず一番に父であるヘンドリック王に会った。
「よう、放蕩娘。ようやく御帰還か、意外と早かったじゃねえか」
「お父様・・・」
父王にあってファニーは絶句した。
一月会わないうちに10も年取ったようにやつれていたからだ。
黒々した髪は白髪が交じり、皺もぐっと深くなった。
立ち上がろうとして、立ちくらみがしたのか足がふらつき床に尻餅を着いてしまったのだ。
「お父様、お休みください。後は私にお任せください」
「冗談言うな、まだ子供の世話になる気はない」
手を貸そうとするファニーを払いのけて立ち上がろうとするも、体に力が入らないのか椅子に手をかけてようやく立ち上がる始末だ。
「王、もうお休みください。後は我らにお任せを」
「そうです、もう寝ていただけないと命に関わりますぞ」
宰相のハワード伯と、侍医にたしなめられ、ようやく王は体を休ませる事にした。

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