幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 83
「ほらこっち来て、おじさんも脱ぎなよ」
壁の一画に掛かっているカーテンを開けると、そこには休憩室への入り口になっていた。
(こいつ、誘ってんのか?)
警備員がそう考えるのも、無理は無い。
(だが………たまには、ガキの身体も悪くないな)
「いいぜ。そんなに見たいなら見せてやるぜ」
遂に警備員が立ち上がり、来ている制服を脱ぎ始めた。
―――その頃・ホテル裏口―――
「グハッ!」
入り口を見張っていた二人の黒服の男達を、背後から忍び寄った阿蘇と蛮悟が殴り倒す。
気絶した黒服達を娼婦達が縛り上げる。
「まったく紅の奴……」
ブツブツ言いながら、蛮悟が通路の先の様子を伺う。
「誰も来ないってことは、監視カメラのほうは紅夜叉が本当にどうにかしてるようだな」
阿蘇がそう呟き、八侘に尋ねる。
「ところで、最上階にオーナーが住んでいるんだったな」
「えっ? ええ、そういう話ですけど」
「そうか………悪いが、俺はその最上階に行って来る。203号室と地下室は任せた」
そう言って阿蘇は、スタスタと通路の先に進んで行く。
「へっ!? いきなり何でっ!?」
突然の阿蘇の単独行動に、目を丸くして蛮悟が尋ねる。
「炬俐にはちょっと貸しがあるんでな」
歩みも止めず、背を向けたまま阿蘇が返事をした。
コートの下に隠した、妖刀『繚乱』の柄を撫でながら………
―――再び警備員休憩室―――
メキッ…メキメキメキッ………
「すげぇ……」
紅夜叉の前で、警備員の身体が本当の姿に戻っていく。
身長は2メートル程。
体は筋骨隆々とした立派な人間の形をしているが、頭は一本角の生えた馬である。
警備員の正体は馬頭鬼(めずき)と呼ばれる馬頭人身の妖怪だった。
200年前の戦では、弟の午頭鬼(ごずき)と共に茨木軍に参加し、『俊足の馬頭。怪力の牛頭』と赤千穂の妖怪からも一目置かれていた。
現在は戦で弟とも逸れ、炬俐の元で働いているというわけである。
「ぉお〜、でっけえ。でっけえ。
凄いなオッサン。」
変身の際、最後まで脱がなかった馬頭鬼のブリーフは限界まで伸びきり、筋骨隆々な体の輪郭を浮き立たせていた。
「デカいのは体だけじゃ無いぜ。フムン!」
馬頭鬼は荒い鼻息を吹き出しながら、両腕と頭を結と“山”の字になるヘラクレスなマッチョポーズで力む。
ぶぁっちぃいん!
限界を超えたブリーフが弾け飛び、その下からバットより大きい棍棒のような勃起した馬の陰茎が飛び出し馬頭鬼の腹を叩き、盛大な平手打ちの様な音を響かせた。