幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 82
面倒そうに言って、再び警備員は紅夜叉に背を向け、モニターの方を見始めた。
(うーん、どうやってモニターの前からこいつを引き離そう)
殺るか?……などと物騒なことも考えたが、一撃で倒せず騒がれたら、後々厄介そうだ。
(とりあえず、こいつの正体を知っておいたほうがよさそうだな)
そこで紅夜叉は、先ず今まで自分にかけていた人間に化ける術(といっても、角を隠すだけだが)を解いた。
「なぁなぁ、おじさんも妖怪なんだろ。オレ鬼だけど、おじさんはなんて妖怪なんだ?」
頭に生えた角を指差しながら、好奇心に満ちた笑顔で問いかける。
「あぁっ……どうだっていいだろ、そんなの」
「そんなこと言わずにさぁ……変身解いて、正体見せてくれよぉ」
「嫌だ。服が破れる」
「チェッ…」
紅夜叉の声に、警備員は素っ気無い言葉を返す。
(服が破れるか………んっ、そうだっ!)
何か考えついたらしく、紅夜叉は警備員室の中を見渡した。
(えーと……あのカーテンの裏は………よしっ…念の為……)
そうっと警備員室のドアに近寄り、邪魔が入らないよう鍵をかける。
「なぁ、おじさん」
再び警備員の背後に回り話しかける。
話しかけながら、何故か紅夜叉は服を脱ぎ始めた。
「服破れるんだったら、裸になって変身解けばいいじゃん」
「バカ抜かせ」
紅夜叉の行動に気づかず、背を向けたまま返事をする。
「できるか、そんな恥ずかしいこと」
「じゃあさ、俺も脱ぐからさ」
「何が面白くて、男同士で裸の見せ合い……」
「オレ、女だよ」
「はぁっ?………おわっ!!」
警備員が振り向き、思わず大声を上げて椅子からずり落ちた。
そこには紅夜叉が短パンをひざ上まで下ろし、脱いだTシャツを握った手を腰に当てて立っていた。
無邪気な笑顔を貼り付けて目的を隠し、警備員を挑発する。
警備員としてはもっと熟した女の体系が好みだったが、いままで菊名が遠呂智に凌辱される様を監視して(覗いて)いて性欲が高ぶっていた。
「お前、恥ずかしくないのか?」
「え〜?なんで?みんなやってるぜ?」
(みんなって誰なんだ?)
警備員は思わず足もとから視線を上に上げていく。
紅夜叉はしゃがみ込み靴を履いたまま短パンを脱ごうそしているが、靴に引っ掛かりなかなか脱げないでいると後ろにひっくり返った。
「うわ!」
おしり丸出しで頭を下にひっくり返る紅夜叉の秘所に警備員は視線が釘付けになった。
さらに高まる欲望。
「あ〜!もう、いいや!」
結局短パンは片足に引っかけたままで立ち上がると「どうだ!」と言いたげに仁王立ちになる。
一筋のムラのない褐色の肌が白い壁に包まれた警備室に映える。