幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 63
「ふぅ〜ん…」
大岩の上でしゃがみ込み、アリスは中の色餓鬼達の様子を見る。
普通の人間には見えないが、アリスには岩の中で自分をオカズに自慰に耽っている、色餓鬼達の姿が見えた。
紫の肌をし、痩せて背も低い色餓鬼達は、とても強そうには見えない。
「でもまぁ、『ポーン』ぐらいにはなるかな」
岩に手を当て、封印の様子を確かめる。
封印を解くのはそんなに難しそうではない。
この大岩を割るだけでよさそうだ。
「あなた達、ここから出たくない?」
アリスがそう聞いた途端、色餓鬼達は「出せっ!」「出してくれっ!」「犯らせろっ!」……と、騒ぎ始めた。
「出して上げてもいいけど、幾つか条件があるわ」
一つ目は、ここを出たら全員寮に移り住み、指示が無い限り寮の敷地から外に出ないこと。
二つ目は、アリスが『好きにして良い』と言った相手以外を犯してはならない。
ただし、風呂や着替えを覗いたり、ちょっとした悪戯をするぐらいなら良い。
三つ目は、アリスには絶対服従。
言うことを聞けば、それなりに良い目をみせてやる。
―――これがアリスの出した条件だった。
「分かった、何でも言うこと聞くから早く出してくれっ!」
そう叫ぶ色餓鬼達を見てニィッと笑うと、アリスは右手を上げ念じた。
すると、ブォンッという風の音とともに、寮のアリスの部屋―――正確にはトランクの中から、一本の槍飛んできた。
アリスの手に掴まれたその槍は、長さが1メートル程と短めで、先端が五つに分かれていた。
「それじゃ、いくよっ!」
アリスが思いっきり槍を振り下ろす。
バキィィィンッ!
すると大岩は、見事に真っ二つに割れたのであった。
割れた大岩から色餓鬼達がぞろぞろと出てくる。
「よし、それじゃぁ……」
アリスは早速何か命令しようとしたが、数匹の色餓鬼が突然走り出し、森の奥へ逃げていった。
「……はぁ、馬鹿ねぇ」
ブゥンッ!
大岩を割った槍を構え、色餓鬼が逃げた方へ投げつける。
相手は複数で、木々に遮られ、到底あたるはずも無いのだが………
バシュッ! バシュッ!バシュッ!
五つの先端がバラバラに別れ、それぞれが意思を持っているかのように木々を避け、獲物を追いかけていく。
「ギエェェッ!?」
「グキャッ!」
「ギャァァァッ!」
逃げた人数分の悲鳴が聞こえた後、槍はアリスの元に戻ってきた。
「まぁ、これで分ったわよね。逃げたらどうなるか」
目の前に跪く色餓鬼達を眺めながら、アリスは満面の笑みを浮かべる。
逃げられないと悟った色餓鬼達は、一応アリスに従うことにした。
「はい、それでアリス様」
「ん?」
「『好きにして良い』相手はどの娘ですか」