幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 33
「赤千穂様、失礼しま〜す」
紅夜叉の怒声を背に、白面は社務所の中へと入っていく。
だが数秒で出てきて、紅夜叉の元に駆け寄ってくる。
「ちょっと紅ぃ…」
「何だよ?」
「赤千穂様、部屋の隅で床に『の』の字書いてるけど、何かあったの?」
「………」
どうやら、おみくじの事でまだ落ち込んでいたようだった。
―――その頃・蒼木ヶ原警察署―――
「くそっ! テメェら覚えてろっ!」
いかにも悪役らしいセリフを吐き捨て、足立圭吾が警察署から出てくる。
「圭吾さん、あまり大きな声で…」
「うっせぇんだよっ!」
隣を歩いていた弁護士の注意も無視し、また大きな声を上げる。
コンビニでの一件の後、圭吾と不良たちは警察署で取り調べを受けた。
圭吾にとっては‘いつものこと’だったので、慌てずに弁護士を呼んだ。
すぐに釈放されるだろうと、取調べをしている警官を余裕でからかったりしていたのだが、一緒に捕まった不良達の証言により、圭吾の犯した多数の罪が明らかになったのである。
しかも圭吾が女をレイプした時、口止めに使う為に撮っておいた携帯の写真まで不良たちが提出した為、結局一晩署に泊まるはめになったのだ。
しかし、その一晩で弁護士が裏で手を回し、そのレイプ事件に関しても被害者の家族に大金を積んで『無かった』事にしてしまったのである。
「あいつら…出てきたらぶっ殺してやる」
今も捕まったままの不良たちに怨みの言葉を吐きながら、圭吾は弁護士の車に乗り込む。
「あーむかつくっ! おいっ、南の」
「ダメです」
圭吾が行き先を告げる前に、弁護士が車を出発させる。
「‘市長’が家でお待ちです」
「……親父がか………チッ!」
ドガッ!
一度助手席の背もたれを蹴った後は、圭吾は家に着くまで黙り込んだままだった。
圭吾は警察に情報を漏らした奴らをどうしてやろうとの内心息巻くょうに弁護士も憤りを覚えていた
(私はこんなガキのオムツ係になるために弁護士になった訳じゃない…)
しかし自分の経歴を守るためには足立家とその周りを守るしかない
唇の下で見えないように歯ぎしりをさせる頃に市長邸の敷地に侵入した