Mr. 2
まぁ俺だって似たようなもんだから、そんな輩を攻めることなんて出来ないんだけど…
「マジにごめん;…俺、時間ないんだよね…」
日本語は通じないことは分かっていながらに弁明する…
でも本当に、仕事がないとはいえテレワーク中の時間帯ではあるのだ…
後ろ髪を引かれる思いで彼女の元から立ち去る…
もし俺がもっとチャラい男だったらお茶の一杯でも一緒に飲んでいただろうに…と、ちょっと口惜しくもある…
まぁそんな下心は置いて置いたとしても、人もあまり出歩いていない、彼女にとっては異国の地で…道にでも迷って心細い思いをしていたには違いない…
そう思うと罪悪感が沸々と沸き上がってもくる…
悪いことしたよな;…
折角俺という男に声を掛けてくれたというのに…俺ときたら録に話しも聞いて上げることもなく、サッサと逃げ出すなんて日本男子の風上に置けない…言ってみたら日本の恥だ…
彼女に日本の印象をそんな風に植えつけてもいいのか?…俺;
考えてみると、今までこういった面倒臭そうなことにはなるべく関わらないようにと…ある意味逃げてきた…
そういう“ゆとり世代”特有な考え方だと世間は言うけれど、そう1つに括られることに反発心を抱いていたのも確かだ…
そう思うと居てもたってもいられなくなり彼女の元に引き返す…
英語も話せない俺なんて、彼女にとっては何の役にもたたないであろうことは分かってはいるけど、このまま何もしないで逃げ帰ったら一生後悔しそうだ…
閉まったシャッターの前に佇む彼女を見つけ、どこか安心する…
リモート勤務で鬱々とした日々が続いている中、これでもし彼女が居なくなっていたら、後味が悪い思いを引きずることになってのは間違いない…
「誰も助けてくれなかった?…」
彼女に向け笑顔を向ける…
“居てくれてよかった”という気持ちから、自然と出た笑顔だ…
俺の声に驚いたように眼を見開く彼女…
彼女にとっては、俺が戻ってくるとは思ってもいなかったことに違いない…
「何か気になってな…」
照れながら鼻頭をポリっと掻く…またちょっと顔が赤らんでくる;…
そんな俺に向け満面な笑みを浮かべる彼女…
潤んだ瞳を見ると、それだけ嬉しかったってことだもんな…
俺が今まで生きてきた中で、これ程に誰かに喜ばれたことってなかったかもしれないよな…
まぁそれほどに心細い思いをしていたってことなんだろ…
「道に迷ったのか?…行き先は?…」
首を傾げて誠意だけで聞いてみる…
だけど誠意だけでは“イッテQ”の出川哲朗みたいには上手くは伝わらない;…