朝、目が覚めると……☆第2章☆ 1
「はぁ・・・何だってこんな事になるのかな。」
思わず溜息が出る。手には紙袋を持ったまま立っている少年がいる。
目の前には色取り取りの水着が所狭しと並んでいた。
最近はビキニの復活もあってか、かなりの数に上っていて種類も豊富だ。
そう・・・ここは女性用の水着売り場なのだ。
「どう?帝。やっぱり水着は、黒のビキニがいいかな?それともこれ?」
「蓮ったら・・・そんなに言うと、帝が可哀想ですわ。では帝、私のはどうですの?」
彼女らの名前はそれぞれ倉前蓮と佐渡留奈。
先ほどからこの2人、帝と呼んだ少年の目の前で、選んだ水着を見せ合っている。
その度に彼は、正直うんざり気味で、かれこれ一時間以上もこんな調子なのだ。
「帝さん・・・あの・・・。」
「みーくん。あずさの水着はどう?」
金沢真由に倉前梓。2人とも水着を持って帝に駆け寄ってきた。
真由は水色のセパレーツにフリルの付いた水着で、ちょっと大人びた感じの彼女に
よく似合っている。一方の梓はスクール水着に似てフリルの付いた真っ赤な水着だ。
プリティロリフェイスの梓には、ちょっと無理じゃないかと思えるけど・・・。
「はは、それでいいんじゃないかな。」
「もぉ、真面目にやってください!」
帝が思わず苦笑すると、真由が頬を膨らましていた。
少年の名は金沢帝(かなざわ みかど)。
17歳、私立巽野宮高校2年。彼は…実は幽霊だったりする。
理由は?と聞かれれば、帝は死神の手違いによって、80歳早く死亡してしまい、
天国行きまで50年以上、幽霊人生を送らなくてはならなくなってしまったのだ。
彼自身、幽霊ではあるが、実体化している。
それは生への執着心がなせることで、その根本は『性欲と独占欲』。
まぁ、普通なら不幸と言った所だが、帝を死亡させた死神達は、様々なアイテムを彼に残してくれた。必要なアイテムを取り出す時は、念じればよい。
鞄が独りでに出てきて、後は中から取り出すだけだ。
では、彼等がどうしてここにいるかと言うと・・・。
今度、私立巽野宮高校と聖ラフレシア女学院との合同修学旅行が行なわれる事になったのだ。場所は南太平洋のリゾート地。
常夏の場所という事で、水着は欠かせないのと前章で交わされた約束のため、帝は皆を連れて来たわけだ。
「ちょっと、帝!」
「あ、すまない。」
いつの間にか蓮が側に来ている。