後始末な人生も悪くないよねって思った 3
放っておけない…見捨てる訳にはいかない…
それを愛と呼ぶには儚過ぎるような…俺の中で初めて味わう感情だった。
それでもこんな自分が誰かに必要とされていることが嬉しかったし、今の俺にとってもこんな唯の存在が救いになっていたことは間違いなかった。
それなのに…唯の巨乳に対して良からぬ妄想を呼び起こし、股間を熱くさせてしまう自分が情け無くもあり、自己嫌悪に苛まれたりもする。
こんなことになるのであればこれまで、欲情に身を任せ、女性経験をもっと積んでおけばよかったと思う。
そうしていれば、こんないたいけない少女である唯が自分好みのIカップの巨乳であったとしても、視覚だけでこんなに勃起することもなかった筈なのだ。
今になって性に対してナンパでも風俗でもいいから、もっと自由奔放にセックスを楽しんでおけば、余裕ある大人の男として唯に接してあげれたのに…と思ってしまうのだ。
【唯視点】
「凌ちゃーん??」
凌ちゃんがなんか考え込んでいた。
たまーにこういうことがあるんだよね、別にお昼なんて美味しければ何でもいいんだからさ、そんな悩むことはないと思うんだよ。
「お、おう」
「どーするの?」
「ん?何をだ?」
「お昼ご飯だよぅ」
「ああ、そうか。唯は何か食べたいものあるのか?」
「私は…凌ちゃんが食べたいものならなんでも。凌ちゃんにお任せしますっ」
何を食べるか、じゃなくて誰と食べるかなんだ。
誰かと一緒に食事するのは、独りぼっちよりも何倍も美味しい。
それが凌ちゃんとだったら尚更…
親しく話すようになってまだ数ヶ月だというのに、凌ちゃんは幼少期からの幼馴染みみたいな…そんな心許せる存在になっていた。
「そんじゃ、うちでカレーでも作るか?」
凌ちゃんの家…それは事件後に実家を出て始めた1人暮らしのアパートのことだ。
「行っていいの?」
前から行きたいとせがんでいた凌ちゃんのうち…
その度に色々と理由をつけて断られ続けてきたのだ。
「金もないからな。これでも自炊始めたんだぜ」
自慢気にドヤ顔を見せる凌ちゃん。
そんなことでこんな顔する凌ちゃんは年上には見えず、かわいい…
「ふふっ、じゃあお邪魔しまーす♪」
というわけで凌ちゃんの車で学校を出る。
途中何人か生徒や先生とすれ違ったけど、凌ちゃんと私のことを構う人は誰もいない。
校内でも腫物みたいなものだから、関わるななんて言われてるんだろう。よくヒソヒソ話はされるけど、気にしたら負けだ。
今は、凌ちゃんが傍にいるから、そんなので落ち込むこともない。
「狭いけど我慢してな」
「ぜーんぜんっ」
黒の軽ワゴン。
凌ちゃんは「2代前のモデルで安い中古車だ」なんて言うけど、私は全然気にしない。
「凌ちゃんのお家ってここからどれくらいかかるの?」
「2,30分ってとこだな」
ちょっとしたドライブデート気分だ。
3か月前迄は、お父さん、お母さんと弟さんとで実家で4人暮らしだったと聞いた。
あの事件で家族が離散してしまったのは、うちだけじゃないのだ…
「ご両親とは連絡取ってる?」
凌ちゃんのご両親は世間の誹謗中傷に耐えられずに、家屋敷を売り払い海外に行ってしまったらしい。
「ああ、弟の後始末がまだ終わった訳じゃないからな…」
後始末か…
うちのお兄ちゃんと凌ちゃんの弟さんのした事は、そう簡単には終わりにはならないだろう…
「それならよかった…理由はどうであれ、家族と絶縁になるのは哀しいもの」
励ますつもりで凌ちゃんの太腿にそっと手を置く。
軽の車内はワゴンといえどもそれほどに狭いのだ。