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後始末な人生も悪くないよねって思った
官能リレー小説 - 学園物

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後始末な人生も悪くないよねって思った 1

「はぁ…せっかくの夏休みなのに学校に来てるってのも悲しいものがあるよね………まあウチにいたって何もすることないけど」

生徒会室ーそう書かれているけど実際には空いた教室を使わせてもらってるだけーで雑務に勤しむ私、坂倉唯。高校1年生。
花のJK最初の夏休みがこんな寂しい過ごし方になってしまったのには、やむにやまれぬ深い事情があった。

私の2つ上の兄はこの高校で生徒会長をやっていた。
爽やかなイケメンで評判も良かったと聞いていた。
しかしそれは外面だけの話。

兄は生徒会の仲間と共謀してとんでもないことをやっていた。
学校からはいろいろ理由をつけて活動費用を必要以上に受け取り、それ以外にも校則違反のはずのバイトやしまいには校内あるいは他校の生徒を相手に恐喝して金を巻き上げていた。
それを学校や他の生徒や学校行事に使ってくれるならまだしも、兄たちは私腹の肥やしにしか使っていなかったのだ。

そんな兄はどこで何やってるのかって?

もうこの世にいないのさ。

今年の春休み。
兄は仲間たちと車で軽いバカンスを計画して旅立った。
この車もいけないことして得た金で買ってなおかつ無免許。人として終わってる。
それで事故って全員お亡くなりになったのだ。
単独事故だったのは不幸中の幸いだったのだろうか。

その事故によって兄たちの過去の愚行が明るみに出て、学校は大変なことになった。
それは坂倉家も同じだった。

父は役職を降格させられ遠方へ左遷。母にいたっては仕事をクビになってしまった。
兄のことが大嫌いだった私は別の高校の推薦入試の合格を取り消された。
一家は離散した。

何もかも失った私は自殺しようとしたところを弟が兄と友人だったというイケメン先生に止められ、今の、兄と同じ高校に拾われ今に至る。


そうして、今は学校でたった一人の「生徒会役員」として兄たちがほったらかしにしていた諸々の作業を代わりに請け負い、夏休みもこうして登校して日々処理に追われる――そんな生活を送っている。

生徒会室は幸いクーラーもあってばっちり効いて涼しいし、目の前には大画面のテレビもあって――これもすべて、兄たちがいけないことして得た金で買われたらしいけど、処分できなくて残っている。私にとってはそれでもないよりずっといい。

さて、画面の向こうは――おっ。

『レフト線、打球は伸びて――!?ポールに当たりました!ホームランです!昨日に続いてロドリゲスが初回先頭打者ホームラン!マリナーズ先制!』

「ふぉおおおおっ!?フリオぉおおおおおおおおおおっ!!!!やったーっ!!」

あぁ、推し球団の得点シーンは疲れた体への癒し。幸せ。

するとそこに――

ガラガラガラガラ(ドアの音)

「おいお前…ちゃんと仕事してんのかよ?」
「やってるよっ。息抜きも大事なのっ」
「まったく…」

ちょっとだけサボってたのは内緒だ。
くたびれた感じのイケメンが嘆息する。

この彼が瀬戸口凌――私の兄と友人関係にあった弟を持つこの学校の教師である。彼の弟も、兄と同じく春休みの事故で命を落とした。教職を解かれることは免れたが、それ以来は尻拭いの日々らしい。

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