憧れの先輩3人組は… 83
学校内では先輩3人の姿を見ることはなかった。平日学校では僕と会うのを向こうの方から避けているのか。それで果たして(主に結花さんが)我慢ができているのか。むしろ僕と会うことでムラムラするといけない、とでも思っているのか。授業中もそういうことが頭の中に思い浮かぶ。
それで先生に注意されることはなかったが、今日はイマイチ集中出来なかった。気をつけないといけない。
「さて今日もさっさと帰る……あっ」
帰り支度をしようとしてた途中で黒板に視線をやる。重要なことを忘れていた。
学期個人面談 戸村、野島、春木、藤城、増田
学期ごとに担任の先生と学校生活について話し、悩みが有れば相談できる場のような機会だ。5人いて3番目か…
僕のクラスの担任は塩谷先生という若い女の先生。美人で優しい人だから何の問題もない。
面談自体は特に問題無く終わった。ただ、
「春木君は将来何に何なりたいとか、高校卒業後の進学や就職について何か予定とか希望はあるの?」
「……いえ、具体的には特に何も」
「そう、まだ1年生だから焦らなくても良いけど、今後の事は今のうちにしっかり考えた方が良いからね」
「分かりました」
と将来について考える様にとの事だ。うーん、どうしたものか……
将来のこと、と聞いて思い浮かんだのが英里紗さんの顔…あの人が言ってることがどこまで本気なのか。佳奈さんが最初は偽物だと疑っていたほどなのが…
そう思いながらひとり暮らしを始めた家に帰ってきた。おそらく先生たちは僕の現在のこの生活は知らないだろう。
「おっと」
鍵が開いていた。佳奈さんかメイドさんが中にいるのだろう。
玄関で靴を脱ぐと廊下をスタスタと歩く足音が聞こえてくる。
「おかえりなさいませ慶太さま。橘家メイドの水本文香と申します。これから宜しくお願いいたします」
「ああ、どうも…こちらこそお願いします」
来瞳さんとはまったくタイプの違う真面目そうな人がいた。
ところで佳奈さんの姿が見えない…どうしたのかな?と思っているとリビングのテーブルに書き置きがあった。
『今回の担当の文香は私も安心して任せられるひとりだと思ってます。真面目で誠実で、 レズなので 浅川佳奈』
……いやいや。安心出来るのは良いけど本人にも見られるメモにこんなハッキリと書かなくても。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、その、態々書かなくても良さそうな文言が有りまして」
「ああ、お気になさらず。橘家では皆知っておりますので」
「そうですか。でも、つまり男嫌いなんですよね。なのに1人で男の世話役を命じられるなんて運が悪いですね」
「いえ、英里紗御嬢様からも『大丈夫、裸を見なければ大して男を感じないと思うわよ』だそうで、実際お会いしても特に拒絶感は御座いませんでした」
「そうですか」
僕の男としてのプライドが……
「昨日の来瞳が色々物議を醸したそうで本日は私が、担当となりました」
「えっと、まさか処分対象になってしまったとか?」
「いえ、そこまでは。伝え聞くところによると御嬢様はお怒りではないそうですよ」
それなら安心できる。
もし来瞳さんが僕が原因で処分なんてことになったら精神的にどうにかなりそうなところだった。
「御嬢様と来瞳の立ち話を小耳に挟んだのですが、来瞳も慶太さまがお気に入りだったらナニを酒の肴にして飲もうだとか何とか」
「…それは全力で制止してもらいたかったですね!」
何か意気投合しちゃってません!?というか英里紗さんあなた未成年でしょう!