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駆け抜ける、青春
官能リレー小説 - 学園物

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駆け抜ける、青春 3

陸上選手としてのキャリアにピリオドを打った前川に桃陽学園は陸上部顧問の椅子を用意した。
彼も快く引き受け、一度解体され部員がいなくなった陸上部は少しずつ再生の道を歩み始めた。
この駅伝大会の優勝は、陸上部復活してからでは初めての大きなタイトルである。

前川は岩間の轍は踏まずに、独自の視点を持ち部員の能力と個性を存分に生かしてノビノビやらせるスタイルをとった。その結果部員一人一人のスキルは伸びていき大会での好結果につながった。

青山愛未は1年生だが実力はもちろん態度と言動もすでに大物レベル。
神川千夏は1年生たちより力では劣るものの常に一生懸命で、皆から慕われる人柄の良さが持ち味。
そこにレベッカという学園史上初めての海外留学生を迎え入れた。

愛未も含めて、レベッカと東海里、駒崎春香の4人はまさに前川人脈とも言える子達で、彼がトップアスリートとしての人脈を生かして直々にスカウトしてきた秘蔵っ子達だ。
その点で言えば唯一の2年生神川千夏は彼女達と毛色が違う。

それは去年の話だった。
消滅した女子陸上部。
前川が監督就任したとは言え、部員はゼロ。
不祥事の影響で新入生からしか部員を取れないと言う制限付きの中、奈緒美が連れてきた唯一の部員が神川千夏だった。
どう見ても走れる体格でない千夏。
聞けば中学生の時は学年でも屈指の鈍足だと言う。
何故陸上部に来たのだと前川すら頭を抱えたくなる生徒が最初の部員だった訳だ。

「家族からも同級生からも豚呼ばわりされるのが辛いって・・・」
「気持ちは分からないでもないが・・・だからと言って陸上やるのは飛躍し過ぎだろう」

とは言え、部員が集まらない以上、彼女でも貴重な部員ではある。
今年度は時期的にどうにもできなかったが、来年度からなら選手をスカウトできるし、それまで千夏が豚と呼ばれないぐらいのトレーニングでもしてやるか・・・
そんな感じで前川の初年度が始まった訳だ。

そして、千夏の走りを見ると・・・
実にバラバラで最悪なフォーム。
これで速く走れと言っても体格云々ではなく走れない。
軽く絶望しかけた前川だが、ふと思う。
フォーム矯正できればそれなりになるんじゃないかと・・・
どう見ても鈍足な千夏がまともに走れるようになれば前川の手腕は評価される。
千夏だってまともに走れたら豚呼ばわりから解放される。
誰にとってもメリットしか無い訳だ。

そう言う訳で前川は千夏を練習されて行くのだが、まずは肉体改造とフォームの矯正。
だが、余り強い負荷をかけると長続きしない。
なので最初の練習は軽く楽しめるものから始めて行った。
それと同時に千夏とはじっくり話す。
雑談と共に彼女の悩み等を聞きながら、目標を定めて1つずつクリアさせていく。
到達可能な目標を定めて自信をつけさせ、少しずつハードルを高くしていく。
夏頃には体型も少し引き締まり、走行フォームもスムーズなものになっていった。
そしてようやく中一女子の平均タイムぐらいが出るようになったのである。

ゆっくりではあるけど着実に進歩していく。
走ることが楽しいと思えるようにモチベーションを高めていく。
前川だけでなく奈緒美も千夏とよく話し合って理解を深め、練習のサポートを行った。

2年生になる頃には千夏もだいぶスマートになって、普通に可愛らしい少女と言えるルックスになり、また表情も明るくなった。

何よりもタイムが飛躍的に伸びた。
今では高校女子平均を上回り、弱小陸上部ならエースになれるぐらいのタイムが出せるまでになったのだ。
当然学年でも上位のタイムだ。
ただスポーツ推薦者が各部活に多数居て、本格的なアスリートの多い桃陽学園では最上位とまでは中々難しいが、もう千夏は鈍足でも豚でも無かった。
むしろタイムを上げた千夏を見て、サッカー部や野球部等が走り方を前川に相談しにくるぐらい目に見えた変化だったのだ。

そんな中で新たな新入生が入ってくる季節。
今度は千夏と違いスカウトされたアスリート女子達だ。
当然と言うか、一年鍛えた筈の千夏より新入生達の方が遥かにタイムがいい。

「みんな凄いなぁ」

余りショックを受けた様子が無いどころか、新入生達を称賛する千夏。
この当時の新入生、愛未が最初千夏に得た印象は『負けてヘラヘラしてるし身体もなってないし最低だ』と言うものだった。
だが、前川が千夏の入部時のタイムを告げて進歩を褒めると認識が変わった。
それは劇的と言っていいぐらいの変化だった訳だ。

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