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駆け抜ける、青春
官能リレー小説 - 学園物

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駆け抜ける、青春 1

沿道から無数の歓声が聞こえる。
いまは高校生、女子の駅伝大会の真っただ中である。

最終区間・5区のたすきリレー地点。
「桃陽学園、スタンバイお願いします」
係員にそういわれ、桃陽学園のアンカー、青山愛未が中継所のスタート地点に立つ。
直線道路の遥向こうからは、遠くからでもわかる黒い肌の少女が綺麗なフォームで愛未の方に向かって駆けてくる。

「レベッカ!ラスト、頑張れ!!」
愛未は駆け込んでくる少女に声を張り上げた。
声をかけられたレベッカという黒い肌の少女はそれにこたえ、肩にかけていたタスキを外し、愛未に向かって高々と掲げる。
その表情に疲れは一切感じられない。

「マナ!」
「お疲れ!」

愛未はレベッカの方をポンポンと叩き、タスキを受け取り駆けだす。
現在3位、トップを行く高校とは1分30秒差。

勢いよくスタートしていく愛未に、後方を走る運営管理者の車から指示が飛ぶ。

「青山、10000mのタイムは前の2人よりお前の方が圧倒的に速い。乗っけから飛ばしていけ!」

(言われなくてもわかってますよっ!)

指示を受け、愛未は声の主に向かって右手を挙げた。

「まあ、アイツには何の心配もいらんな」
陸上部の監督・前川は早速ギアを一段入れ替えた愛未の姿を見てフッと微笑んだ。

最終区の中間地点で、愛未は前を行く2校とみるみるうちに差を詰めていた。

「お前の方が前の2人より30秒速いぞ。プッシュしろ!」
前川の指示が飛ぶ。

(だいじょーぶ。最後に勝つのはあたしだから)

愛未は顔色一つ変えず、前を追う。

最終的に残り1kmのところで愛未がトップの走者をとらえ、桃陽学園は優勝を果たす。
この大会で愛未は「スーパー1年生」と称されることとなる。


スタートの1区では大会メンバー唯一の2年生でキャプテンの神川千夏が出遅れ、2区へのたすきリレーは16位で通過。
しかしここから4人の1年生が期待に応える走りを見せる。
2区の東海里(あずま みさと)と3区の駒崎春香がともに3人を追い抜くと、続く4区を走るケニア出身のレベッカ・ワイリム・マイナが怒涛の7人抜きで3位に浮上。
最後のタスキを受けた愛未が残る2人を交わし見事に優勝を果たしたのだ。


「ごめんね…私がもっと頑張ってたらみんな楽に走れたのに…」
「千夏さんのせいじゃないです、最終的に一番前でゴールすればすべてオッケーなんですし」

まるで負けたかのような顔でめそめそする千夏を、1年生4人が慰め励ます。
そして5人で笑顔の記念撮影。
それを見つめながら前川が優しく笑みを浮かべ、拍手を送った。


桃陽学園はもともとスポーツに力を入れていた私立校であり、陸上部も男女両方でオリンピックアスリートを輩出した名門であった。
ただし最近では「堕ちた名門」とも呼ばれていた。

その理由は前川が顧問に就任する前、当時の陸上部総監督による数多のセクハラ・パワハラ・暴力問題であった。しかしその大半は校内レベルで揉み消され、表に出ることはなかった。陸上部総監督と当時の桃陽学園の校長が親友という関係だったことがこの結果を招くことにつながった。

しかし4年前、その校長が自身の病を理由に退職したのをきっかけに事態は大きく動くことになる。
一人の勇敢な女子部員が陸上部総監督のセクハラと暴力を告発、それがメディアにも伝わり全国ニュース級の大騒動になった。
これまで隠されてきた事実が次々明るみになり、当初は全面否定していた陸上部総監督だったが日を追うごとに劣勢に立たされ、ついには陸連からも追放される。

その一方で桃陽学園の陸上部は空中分解し総監督の追放によって部員は一時ゼロになった。勇敢にも告発した女子部員は総監督の追放という偉業の代償として自らのアスリートとしての未来を失ってしまう。

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