君の人生、変えてあげる〜第2部〜 2
「うーん、そーだな、それでもいいけど…学校じゃちょっとそれだと…本名で呼んでくれたら嬉しいかも。早瀬美空」
「じゃあ、美空さん、ですね。僕のことも…」
「よろしく、たっくん!」
「!?」
「ふふふっ、かっちゃんがそう呼んでたから、私も、いいかな?」
かっちゃん?誰だ?脳内のメモリーを総動員して考える。2年生にそんな名前で呼ばれる僕の知り合いなんていたか…………あっ
「ええと、黒田勝代先輩?」
「そう、勝代、で、かっちゃん」
「同じクラスなんですか?」
教室に赴いて演説した時、美空さん、いたっけな。
「そう、同じクラス。うちの教室に来るよ、って話は聞いてたんだけど、その日はお仕事が入っちゃって休まなきゃいけなくなっちゃって、残念だったな」
僕の頭の中には、勝代さんとともにあの二年一組の文芸部の方々など何人もの人が頭に浮かんだ。
「そうだったんですか。それは、お目にかかれず残念です」
美空さんはちらっと時計を見た。
「そのうちゆっくり話せたらいいな」
「はい、是非」
「じゃあ、またね!」
美空さんはジュースとお菓子を買って小走りで売店を出て行く。
僕もエナジードリンクを買って教室に向かった。
1年1組…僕のクラス。
特別変わった雰囲気はない、いつもの朝だ。
「たっくん、おはよう」
教室から出てきたポニーテールの女の子、浅岡海里ちゃんが笑顔で挨拶した。
海里ちゃんはそれからすぐに僕の後を追うように一旦教室に戻って僕の頬にキスした。
これも、いつもの朝。先月の宿泊研修の後に「教室でも、常識的な範囲内なら、たっくんと仲良くしてもいいようにしよう」ってことになって始まったこと。まあ、教室でそうするのは何人かだけだけど。
「選挙終わったし、もっと遠慮なく教室で仲良くしてもいいのかな」
海里ちゃんはそう言って僕の正面に回り、唇を近づける。
「海里ちゃん、あんまりたっくんに迷惑かけないでね」
後ろから声がかかった。
うちのクラスの委員長、原田飛鳥ちゃん。
「ふふふ、別にたっくんに迷惑だなんて。これはねー、日常のねー」
「僕だってそんな特には」
「もうちょっと、周りを意識してほしいな」
「はーい」
飛鳥ちゃんと海里ちゃんが教室に戻っていく。僕もそれに続いた。
「アスはきっと、海里に妬いてるんだろうな」
自分の席に着くと、後ろに座る千葉胡桃ちゃんがボソッと呟いた。