僕らの天使 10
アーシャの行きたい場所の近くにある大学。
いかにも都会のお洒落な感じのするところで、周辺も商業施設がたくさんある。
正直今の僕の学力では厳しいと思うけど、一度見ておくくらいいいと思ったのだ。
「私も、ちょっとだけ興味あったな…」
ゆりかさんが小声で言った。
ゆりかさんって、卒業後どういう方面に進みたいんだろう?僕はふと、そういうことはあまり話していなかったことに気がついた。しかし、話してもこっちにまだあまり胸を張れるきちんとした方向性もないのでその話をするのはやめた。
ちなみにH大にはかなり多彩な学部がある。
車はインターを降り、川を渡って、いよいよあの写真のタワーが見えてきた。
「わあ、タワーだ、タワーだ!」
アーシャが嬉しそうにはしゃぐ。
「昇れるの?」
「昇れるけど、そんなには高いとこじゃないんだ。展望ならもっと見えるとこ行こうよ」
タワーの向こうにはさらに高い建物がいくつかある。
前日ちょっとだけ観光ガイドや施設のサイトを見たけど、その中にショッピングモールやレストランが入った複合商業施設がある。
「景色を見ながらご飯が食べれるところもあったはず」
「ホント!?」
アーシャの反応は子供っぽい。でも、そこが可愛い。
そうして車は、街中に入っていき、地下駐車場に入っていった。
「止めた場所の記号、覚えててね」
記号?ああ、地下駐車場だから、アルファベットと数字で大体の場所を示す記号がある。
「お姉ちゃん、たまに、どこに止めたか忘れるんだよ」
ゆりかさんが僕にちょっと笑いながら説明した。
そして、僕たちは地上に出て、展望エリアへのエレベーターに向かう。
「この、駅直結のビルが、今はここで一番眺めいいんだよ」
「わぁ、楽しみです!」
アーシャがキラキラするような笑顔で言う。さっきから小さな子供に戻ったみたいな感じだ。その中身と身体のギャップで変なところが興奮しそうになる。ゆりかさんとさくらさんだっているのに。
時刻は午前11時。
エレベーターで最上階を目指した。