僕らの天使 5
「ナターシャもエリーチカも、日本に来るって決まってから、日本語勉強始めたのに、もうこんなにうまくなって」
「アーシャはもっと前から勉強してたの?」
「うん、日本に、興味あったから」
「そうなんだ」
「近いから。近いけど、なかなか行けないところで、でも、来てみたかった」
話を聞いていくうちにアーシャのいろいろなことがわかってくる。
日本に興味を持ったきっかけはアニメや漫画からで、日本語を勉強する上での教材にもなったとか。
日本に来た理由はお父さんのビジネスの為だとか。話している間も妹2人のお世話したりして、いいお姉さんの雰囲気もある。
「私、ここ行ってみたいんだ」
アーシャはスマホを操作して、画像を出した。
その画像は、タワーと、通りいっぱいに広がった、緑や花溢れる、多くの人が行き交う公園。その後ろにビルがたくさん、という風景だった。
その街は、僕たちにはすぐにどこだかわかるところだ。
「そうなんだ」
「住んでた街、2000人もいないちっちゃい街だったの」
僕が住んでいるこの町も田舎だけど、広大なロシアでアーシャの言う小さな町…比べ物にならないだろう。
「ここなら、電車で1時間半くらいかなぁ…週末、アーシャが時間があったらどうかな」
「本当!?ありがとう、真野くん」
ぱあっと明るい笑顔を見せるアーシャ。うん、やっぱり天使だ。
勢いでそう言って、僕ははたと考えた。
この田舎町から電車の駅に出るまでが、簡単ではないのだ。
ほぼ、以下の3つの選択肢しか思いつかない。
1、朝夕しかないバスに乗る…土休日にバスあったっけ?
2、自転車で頑張る…アーシャ自転車ある?
3、誰かの車で送ってもらう…誰に頼む?