僕らの天使 12
「あぁ、車は使わないんですね」
「この辺はたぶん、車で移動するよりもその方がいいんじゃないかなって。だからさっき、場所覚えておいてね、って言ったわけで」
ちょっと唐突に言ったH大のことだけど、少しでも雰囲気が感じられるのはよかった。
そんな話をしているうちにメニューがやってくる。
さくらさんはパスタ、ゆりかさんはオムライスを注文したようだ。
昼食を美味しく頂いているうちにどんどん混んできてついに待っている人も見えるようになった。早めに来ておいてよかった。
食事が終わってからしばらく展望フロアに留まり、さっき見られなかった方向も眺める。
「ほら、H大」
「やっぱり広いですね」
H大は、たくさんの学部があるだけに、長辺が地下鉄二駅分にも渡るくらいの広大なキャンパスを持っている。
キャンパスの一角にうっそうと森が広がってるような場所もある。
「さくらさんはH大、目指さなかったんですか?」
「私でもちょっと届かなかったかな…」
さくらさんでも届かないとなると、僕なんかじゃとても……かな。
外の眺めを楽しみながら食事を食べ終える。
店を出てまずはビルの中を散策しに行く。
「私達の街、ここ数年でどんどんきれいに、なったんだけど、こんないっぱい店があるところはないよ」
アーシャは目に見えてはしゃぎながらいくつかの店を覗いて、ときに「あー、カワイイ!」など歓声を上げた。
僕でも聞いたことのある有名なブランドの服屋とか、可愛い雑貨とかが売られているお店を覗きながらしばらく歩く。
「ゆりかさん、二人でおそろいのモノ、何か買いませんか?」
「んー、アーシャは何が好みなの?」
うーん、ちょっと女子同士のトークについていくことができないなぁ。