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香港国際学園〜第二部〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜 618

まだあどけない少女に似つかぬ古風な威厳ある口調と雰囲気…彼女のアンバランスなギャップと圧倒的なオーラに呆然としていた彼らも、ようやくその正体に気付き破顔して少女の周囲に集まる。

「…何せ、大国主と黒龍の血を引く『切札』が奴にはあるからのぉ…」
複雑な表情で少女を見て言う玄武…他の者とて手出しできない歯痒さと、神であり傍観者である己の立場を充分に理解した表情で少女を見ていた。

「で…『天使』共は?お得意の傍観か?」
白虎の問いに青龍が答える。
「メタトロンだけは香港に来ているらしいが…奴等は事の重大性を分かってないらしい…」
「けっ!だからよぉ!六十年前のアレは俺も嫌だったんだ!」
「あらあら…白虎は倶利ちゃんと同じ意見なの?」
「うるせぇっ!あいつとどこが同じなんだ!?あぁっ!?」
「百パーセント全てよ…」
「ほっほっ…似た者同士、意が合わんのは世の常…それより主達も気付いておろう?」
四人の視線は屋根へと上るための階段に向けられる。
その先には、一人の少女がいた。服部優奈である。
「ふふっ…お嬢さん、どうしてここに?」
「あ…あなた達は……?」
「興味本意で来たんだろうけど、盗み聞きは良くないわよ。その命、散らすには早すぎるわ…」
「わた…しは…」
「ふぅん…相手の能力を鑑定する能力…それで私達の存在にシコリを感じたのね…」
朱雀に代わり青龍が続ける。
「安心しろ、殺しはしない。ただ…」
青龍は優奈の胸に手をあてがうと何かを入れる動作をした。
「!…」
「詞虫…我等の事を他言した時、心を喰い破る虫を入れた…意味は分かるな?」
コクコクと壊れた人形のように頷く優奈。その目に掛けられた割れた眼鏡に相手の数値が映し出されていた。
(この数値は…公主以上!?なんなのよ!)
死線をやっとの事で潜り抜け、安堵も束の間、興味に任せ見に来た結果、四人の化け物が目の前に、しかも非友好的に存在している。
自分の不運を呪い、自然と目からは涙が流れていた。
「青龍、女の子を泣かした〜!」
「怖いからなぁ〜、青龍の顔!眉間にシワ寄せちゃって…」
「おまけに目付きも悪いときておるからのぉ…」
「ふんっ…行くぞ…」
青龍は溶けるようにその場から消えた。
「…逃げたな。」
「旗色が悪くなると逃げ出すのは相変わらずじゃな…」
白虎と玄武もいなくなる。
「……まぁ、忘れるのが一番よ。私達の事も、今日の事もね…」
朱雀はその長いしなやかな指で優奈の涙を拭うと、ニコッと微笑み、三人と同じく消えていった。
後には座り込んだ優奈と戦の轟音だけだった。


「……奈………優奈!……優奈!!」
優奈が目を向けると理人が心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫か?顔、真っ青だぞ?」
「ええ……平気よ。思い出してただけだから…もう大丈夫よ。」

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