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香港国際学園〜第二部〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜 613

スライドオープンしたグロックに最後の弾倉を叩き込みながら、肺病持ちのような荒い呼吸を噛み殺し、ひた走る。
「神も仏も運命も無いッ!腕づくでッ!普通を勝ち取るッ!!」
校舎裏に通じる通路、門扉の南京錠を銃弾で砕き、蹴破り再びひた走る。
狭い通路で肉片をこびり付かせた鉤爪を広げるファントム…足元には男女の区別さえ付かぬまで解体された屍の山…。
それでも服部優奈は止まらない、いや誰が止められようかと、ひた走る…。
 

…夕日の沈む丘…
「…この丘…を越えれば…」
どれだけ走っただろう…たかだか校庭から校舎裏までの距離が、幾百の星空を繰り返した果てしない旅路にも感じられたが…それもあと僅か。
ロクに膝も立たぬ幽鬼が如く歩み。
失禁に嘔吐、流血と返り血…鉤裂きだらけの制服は元の色さえ判らぬ程に変色していた。
とうとう膝を付く優奈、這う様にして丘をよじ登る…既に片方のレンズが砕け落ちた眼鏡に夕日が眩しかった…。
詩の一幕にも相応しい光の中、ふと風に乗って流れてくるのは……屍臭。
「え…?」

正に地獄絵図。
避難シェルターを包囲したファントムの一団…20体近くは居るだろうか。
そして避難訓練で何度も無駄な整列行進を繰り返した広場を埋め尽す屍。
恐らく服部優奈と同じくここを目指したと思われる生徒達の残骸と化した屍。
ただ単に効率良く、人間が集まってくる…逃げ込んでくる場所に配置していただけ…ソイツらにとってはただそれだけであった。
ただ単純に人間を殺す、異能力者対応人型兵器ファントム。
「どうしろって…言うのよ…?」
かすれ切った涙声、唯一の希望も潰えた今どうしろと言うのだ?

最後の一人か…負傷と疲労で酔いが回った様に刀を降りかざし、抵抗か突破を試みていたらしい少年に群がるファントム。
…そいつらが彼を解放した後には捻じ曲がった刀を墓標に無惨な屍が晒された…。
避難してきた生徒を殺し尽したファントム達…どうやら優菜の存在を探知した様だ。
ノッペラボーのトカゲを思わす顔を彼女に向け、わらわらと向かって来る。
「ひぃ…?」
かすれた悲鳴を上げながら這いつくばって後退する、爪が剥がれ膝が裂けるが構うものか。

今度はさっき撃ち漏らした奴らがいるかも知れない…しかしそれ以外に道は無い、僅か数メートルの背後まで迫ったファントムの影が…死神の如く彼女に覆い被さる。
必死の逃亡…それが彼女の明暗を分けた。
「悠里っ!眞澄っ!行くぞっ!!」
優奈の視界を霞める少年…些かその声は恐怖に震えていた気がしたが、確固たる意思を持つ響き。
…ばごんっ!…
短銃身のショットガンの閃くマズルフラッシュが、死神の影を祓った。
「貴方は…?」
夕日に照らされたその容貌、一言に表現するならば『凡庸』…であった。

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