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香港国際学園〜第二部〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜 610

一斉射撃、銃剣の槍襖…それで漸く数体のファントムを倒すも、たちまち倍以上の被害が出た。
…びちゃ…湯気の上がる熱い臓物が優奈の頬に張り付いた。
「ヒィイイイ!?」
血臭に混ざる排泄物の臭いは大腸か。

「なんで…?」
紅い思想の連中だけではない…風紀委員の特殊部隊が、黒服のアンタッチャブル学生が、甲冑姿の十字軍学生が…熱い想いを胸に…思想の壁、心の国境を越えて轡を並べていた。
いやそれだけではない。
「クラスの武器庫開けてっ!あるだけ借りて来てっ!!」
三編み眼鏡のHR委員が、加速能力の坊主頭に鍵を渡した。
「急げっ!全員に分配しろっ!!」
数十秒で両肩にボストンバッグを抱えて戻って来た彼が中身をブチまけた。
古くは警察官のステイタスとされた.38口径リボルバー。
日頃ただ安直に皮肉を込めて『地味で大人しい子』と呼ばれる少年少女までが武器に殺到、そして我先にと戦列に加わった。
押し寄せる軍勢を殲滅すべく立ち向かう。
「戦えないなら逃げなさいっ!邪魔よっ!!」
さっきのHR委員…しかもチラリと襟章を見たところ下級生、呆然としていた優奈を叱咤するなり走り出す。
今日初めて扱うのではないか…倉庫に仕舞い込んでいた、錆を浮かせる.38リボルバーを振りかざしながら。
英雄譚の一幕に自分の居場所を見つけたかの様に。
「ジャンヌダルクにでも…なったつもりなの?」

たちまち彼女も汚臭漂う肉片と臓物の海に加わる様を、不思議と冷静に服部優奈は傍観していた。
「…言わんこっちゃない…。」
ごく平凡な少年少女が、ある日突然訪れた学園の危機に立ち向かう…中々素敵なフレーズではないか、悪くない矜持ではないか。
「いい夢、見れたのかな…私にはそんな覚悟ないよ。」
無論、優奈の心中に彼らを讃える意など欠片もない。
群衆心理の熱に浮かされた、安っぽい覚悟の馬鹿な連中…気が付けば五体満足でいるのは優奈だけではないか。
「え…?」

猛獣の檻に放り込まれた兎、現実となった悪夢が完全に包囲していた…白いトカゲを擬人化した様な人型兵器ファントムの群れが。
「な…なんで私だけ…?」
合理的な理由、人型兵器ファントムにプログラムされた優先順位…戦闘力の低い人間を後回しにしただけの結論であった。
「…死にたくない…」
ふと唇から漏れた言葉、しかし彼女が『非戦闘員』であっても『味方』と認識されない以上は抹殺対象である。

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