香港国際学園〜第二部〜 556
「よし、それでは付いてきてくれたまえ」
そう言って歩き始める三人組、それに付いていく白月、少々遅れて黒禍も続く。
『なあ、紫怨』
黒禍の頭の中に呂布の声が響く。
『喚んでもいないのに来るな』
不機嫌そうに返す黒禍、勝手に来たのが気に入らないのだろう。
『そう堅い事を言うな、せっかく忠告に来てやったのだからな』
『言われずとも解っている、彼奴等に気を許すな、そう言いたいのだろう?』
『正解、正しくは奴らではなくあの玄人とかいう奴に、だがな、どうもきな臭い』
『おそらく背後に何か在るのだろう、この学園のことだ、何があってもおかしくない』
『その通りだ、ま、解っているならいい』
そう言って呂布の気配は消えた。
(そうだ、この学園では何があってもおかしくない、使命を達するには慎重にいかなければ)
黒禍紫怨、彼もまた複雑な背景を持つ者なのか。
傍ら、何のつもりか知らないが…玄人とレイナの間に割込む様に歩いていた神凪晶と目が合った。
「…。」(晶)
「…。」(紫怨)
共鳴。
音無弟に続く無口な三点リードの王子様達、何か通じるモノがあった様だ。
紫怨は珍しく表情らしきもの…感謝の意に頬を緩めながら玄人に振り返る。
「すまん…遠慮なくたからせて頂く。」
大門は、紫怨と晶の顔を見比べ困惑する。
「え?あ…うみゅう…晶ちゃん君っ!何教えたのかねっ!お兄さん怒らないから正直に話してごらんっ!?」
「…。」
晶の唇の端が2mm程つり上がった様な気がした。
レイナは彼なりの笑顔だと解釈した。
「そーいや…デルリンってクラス浪人にしちゃイイ部屋に住んでるし…服や装備の仕立ても良いのよね〜?」
レイナの指摘に晶の表情が一瞬翳る、彼女が玄人の私室を出入りしていると悟った辺り…ベッドを共にしているなら当然だろうが。
困惑を更に露見させる大阿門D玄人。
良く手入れされたレザーの上下といい、大斧とマトモに斬り結んで平気な長剣といい…彼の身なりは良い部類に入る。
皆には話していないが傭兵時代の貯金か内緒の収入源でもあるのか?
「…口止め料…と思えば?…」
晶の唇の端がもう2mm上がる…タカる気満々な様だ。
「ご馳走様〜!!」
飛び跳ねる美幸を仔猫でも捕まえる様にブラ提げ紫怨は無言で制する。
「てへ!ごめ〜ん!!」
そういえば…何か大事なコト忘れていないかい?この小さな『召喚師』…白月美幸は?
…男宿…
「か…怪獣だぁ〜っ!!」
…ずしん…ずしん…
体長10m以上…神話に語り継がれる『ドラゴン』そのもの…そいつはドヤ街を踏み荒らしながら前進していた。
「大変だっ!孤児院の方角に向かってるぞっ!!」