香港国際学園〜第二部〜 543
我関せずな黒禍は捨て置き、審判員は白月に軽くコメカミをピクつかせるが…彼女は大人を小馬鹿にしたかのような笑みを崩さない。
「いや…だからぁ…ルールブック読んだの君ぃ?」
無軌道な試合展開を防ぐ為、召喚術は試合開始からとなっているのだ。
「いーじゃんっ!サトシだってピカチュウ連れてる訳だし!?」
あ…コイツ確信犯だ…と審判員たちは顔を見合わせた。
こうして召喚の手間を省く為『召喚モノRPGにアリガチなマスコット的存在』よろしく予め試合前に召喚しておいたモンスターを連れ歩く選手が後を絶たないのだ。
審判達が顔を見合わせていると黒禍が初めて口を開いた。
「従え」
一言言っただけで再び黙る、しかし白月には効果があったらしく「うー……紫怨が言うなら」と渋々だが了承した。
「仕方無いっ! じゃあ#ドゥ※ガ*グ、客席で応援してねー!」
どうやら人間に発音出来なさそうな単語はドラゴンの名前らしく、ドラゴンは巨体を震わせて客席へ向けて飛翔した。
『では両者、準備は良いようで…第一試合開始ぃ!』
カンッ!
ゴングがなると同時に黒禍が動いた。
一方マーカー、赤井ペアは…
「有馬!俺に任せろ!」
マーカーはそう言うと刀を両手に持ち、口で咥え黒禍と対峙した。
『おっとマーカー選手!ロ〇ノアか?ロロノ〇・ゾロの三刀流かぁ!?』
『しかし、あれは強靭な顎を必要としますわ。マーカー選手は大丈夫でしょうか…』
今泉ジェロニモの勘が当たり…
キンッ!バキャッ!
刀と斧がぶつかり合った金属音と共に鈍い音が会場に響いた。
「ひぃ、ひぃたい!」
前歯を全て失ったマーカーは悲鳴をあげた。
「下がれっ馬鹿!」
マーカーを怒鳴りつけ、赤井有馬は黒禍に斬りかかった。
『速い!赤井選手、高速の連撃に黒禍選手、防戦一方だぁ!』
『赤井選手の能力は高速でしたわね。しかし、黒禍選手は防戦してますが一撃も負ってませんわ…』
黒禍は巨体を上手く使い、有馬の剣の隙を見つけ大斧を振るう。
「はぁっ!」
黒禍の気合い一閃。有馬は地に伏した。
『決りましたぁ!黒禍選手一人で勝ってしまったぁ!』
『直前のゴタゴタは何だったんでしょうね?』
『まったくですね、先生!さて次の試合は……』
「ねぇ?流…あれじゃ判断できなぞ」
アフロが糾弾する。
「え〜、皆さんご静粛に。今日はタッグマッチのトーナメントなので最後まで待って下さい!」
流の前髪がまた後退した。
『さてぇ!これで一回戦は終了しました。休憩を挟んだ後、二回戦を開始します!じばらくお待ち下さい!』
A組、観覧席…
「あ〜…辺理達はまだ、来てないのか?」
「はい…見てきましょうか?」
理人の問いにクラスを代表しひかるが答えた。