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香港国際学園〜第二部〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜 510

ピンク色の厚紙をハートマークに切った名札には
『非常食・嶺那』
とあった。

「ハーイル!ヴィンセントぉおおお!!」
誇らしげな笑顔で右手を掲げ、姿勢を正す少女…鬼畜な仕打をむしろ光栄と受け入れているようだ。
「自己紹介させて頂く…俺の名はヴィンセント・ラクレイン。」
コホンとひとつ咳払い、非常食がまたも『ハーイル!ヴィンセントぉおおお!!』と絶叫するのを無視して続ける。

「詳しい素性が明かせん事を許して欲しい…太陽の光と流れる真水を避けて夜道をさすらい、ニンゲン共に眠れぬ夜を与える貴族であったが…我が主にして『カノジョ』である楠凛の計らいで君らの学級に迎え入れられた。」
吸血鬼の朱い唇から流れる言葉、そのどこに素性を明かせていないと言うか。
凛は『カノジョ』の一言に顔を赤らめ、嶺那はまたも万歳の句を叫ぶ。
「へぇー…貴族辞めて一般人になっちゃうんだぁ。」
「頑張れ〜!!」
誰も気付いていないのか気を遣っているのか、無責任な声援が送られていた。
「まぁ『体質の都合で時折ニンゲンの血を欲する事』もあったのだが…そこにいる如月嶺那くんが『非常食』として申し出てくれたお陰で解決された。」
「ハーイル!ヴィンセントぉおおお(感涙)!!」
訳も解らず盛大な拍手に包まれる教室。
「…ハッハッハッ…賑やかになるのう…」
「いや本当に!なんかキナ臭い奴が来たらどうしようって…なぁ!?」
豪傑笑いする武蔵の隣で小次郎も歓迎の笑みを浮かべた。
…え…何かヤバいと思うの僕だけ?…
超不安顔の執事又八(ルーファス)、このクラス唯一の常識人である。
用意された席に腰を下ろす吸血鬼とその非常食。
「初めまして…ハーヴェイ・バルバトロイです。」
「ヴィンセントだ…宜しく頼む。」
「うわスッごいっ!神父さんですよっ!本物っぽいですよっ!?」
金髪碧眼の神父、少々老け顔の少年はにこやかな笑顔で吸血鬼(と非常食)を歓迎していた。
ヴィンセントに至っては、その神父姿の生徒と初対面とは思えぬ親しさで雑談を交す。
「過去ニンゲン共はニンニクの花輪と十字架を掲げ、白木の杭を削り銀の銃弾を鋳込み、俺の昼寝時を狙った…。」

「ハッハッハッ…まるで『吸血鬼』扱いですねぇ?でも大丈夫!このクラスにそんな…。」
…みんな(特にハーヴェイくん)本気で気付いてないの?さっきから本文や彼の台詞の中に『確実にソレとわかるキーワード』が山程含まれてるのに?…
お嬢様の机にテーブルクロスを敷き、自分の机では携帯コンロの小鍋でバンホーテンのココアを練りながら心の中で激しくツッ込むこのクラス唯一の常識人、執事又八(ルーファス)であった…何処のクラスでも常識人は気苦労が絶えない。

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